12話.レムリア・オルレアン

「会いに行こう」


 ファウストの言葉に驚く2人。

ファウストがこの話に不安を感じているのは表情から明らかであった。

そして、そんな2人にファウストは門衛に聞こえないほど小さな声で告げた。


「色々と思うところはあるよ。

 ただ、現状手詰まりとなっている僕たちにとってこれは光明こうみょうでもある」


ファウストの言葉に静かに頷いた2人は、今日はもう時間も遅いため明日の朝に伺うことを伝えた。

そして、翌日の朝3人が朝食をとっていると食堂まで昨日の門衛が迎えにきていた。


「オルレアン様のところまでお前たちだけで行かせるわけにはいかないからな。

 俺が案内するから、ついてくるように!」


呆気にとられる3人だったが、手早く身支度を済ませてオルレアン家へと向かった。

オルレアン家の屋敷に到着した一行を門の前で待機していた執事が出迎えた。


「昨日、オルレアンさまより命令のありました3人を連れてきました」


そう告げた門衛は3人を引き渡しその場を去った。

3人は門衛に感謝を告げて、執事とともに屋敷へと向かう。

そして、案内された1室のあまりの豪華さに言葉を失うのであった。


「しばらくこちらの応接室にてお待ちください。

 まもなく、ご当主レムリアさまがお見えになります。」


それだけ言い残し退室する執事。

豪華すぎて落ち着かない部屋でソワソワしていると、一人の男が入室してきた。


「3人ともよく来てくれた、私はレムリア・オルレアン。

 この王都の治安維持を任されているものだ。

 君たちが先日の連続殺人犯を捕縛した3人か」


レムリアに頭を下げる3人。

そして、ぎこちなく順番に名乗っていった。


「アイオンに、クラウスに、ファウスト……

 実に素晴らしい働きであった、改めて感謝する」


「あ、ありがとうございま……」


緊張で若干噛みながら答えるアイオン。

そこに言葉を被せるようにレムリアは話を続けた。


「城塞都市ラッカードでの件も聞いている。

 ジンの目論見が成功していたら、王都にも多大な影響がでることになっていたであろう、そちらにも感謝する」


3人はレムリアが城塞都市ラッカードの事件、そしてそれを解決をしたのが自分たちだと知っていたことに驚いた。


「まさかラッカードの件までご存じとは……」


「私は王国騎士団の団長でもあるからね、王国内で起きた事件の情報はすべて私の元に報告があがってくるのだよ。

 そんなことより、まずは座ってくれたまえ」


レムリアの言葉を受けて席に座る3人。

レムリアは屈強な身体をしており、その風貌からは騎士団長に相応しい覇気に満ちあふれていた。

貴族と呼ばれる人はただの軟弱な金持ちだという偏見を持ったクラウスでさえ、無意識に身を構えてしまった。


「レムリア・オルレアンさま、本日はお会いできて光栄でございます。

 連続殺人事件の実行犯を捕獲した件でお呼びであると伺いましたが……」


「レムリアで良い。

 昨日の件、ラッカードの件、その礼を伝えるために会ってみたい…… と思った次第だ」


「ありがとうございます、レムリアさま。

 しかし……

 あなたほどの方がこの程度のことで一介いっかいの村人にすぎない我々にお会いして、しかも礼を…… ですか?」


ファウストは疑問に思っていたことを素直に尋ねることにした。


「何か別の意図があるようにお見受けするのですが……」


「ほぉ、武勇だけではなく頭のほうも切れるのか!

 ……では、1つ聞こうか。

 連続殺人事件の真相について何か知っていることはあるか?」


「……質問の意図がわかりかねますが……」


「そのままの意味だ。

 君たちが捕まえたのはただの実行犯、黒幕は別にいる。

 君たちならこのくらいは把握しているはずだ。

 もう黒幕にも見当をつけているんじゃないか?」


 ファウストは言葉を詰まらせた。

ジョルジュ・アルデンヌが黒幕であると、この場で言ってしまって良いのかの判断に迷っていた。


「あぁ、知ってるぜ!

 ジョルジュ・アルデンヌ、やつが黒幕だ。

 ​まあ、信じるかどうかはあんた次第だがな」


「く、クラウス!!!!

 レムリアさま、今のは戯言ざれごとと聞き流していただけると……」


「ははははははは!

 気に入ったぞ!!!」


クラウスとファウストのやり取りを見たレムリアは高笑いをするのであった。

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