beija Flor

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#1 Avaricioso Ⅰ

男は日本の普通のサラリーマン。国立の有名な大学でて、大手企業鹿守株式会社に入社した。そこは、アフリカ国で製造している食品を日本に輸入することを生業としている会社だ。塩島はそこで働いていた。おれは、特に仕事が早くできるわけでもなく、見た目もパッとしない、身長も低いし、偉い役職がついているわけでもない。あるのは語学力だけ。




仕事上、行きたくもないゴルフに連れていかれたり、上司との会食。そして、職場での暴力。何も言わない、何も出来ない俺にケツを蹴ったり、暴言、会食での会計を全部おれに払わせたり、とつまらない、死にたくなるような人生を歩んでいた。




この世界は、非道なものだ。なぜなら最近「seps」と呼ばれる脅威的な新型ウイルスが全世界中に蔓延していたのだ。おかげで、アフリカからの食品輸入は一時中止、会社は経済難。給料は激減、さらにあんまり仕事の出来ないおれは、周りからの圧が凄かった。「あいつはいつ居なくなるのか?」と、言わんばかりの目付きだった。それもそうだ、こんなおれだからな。こうなるのも当然だ。何も無い塩島には、言い返すこともできないチキンだから。どうしようもない。




ある日だった。会社に行くと、上司の遠北さんに呼ばれ、2人で会議室に向かった。遠北健人、塩島の上司で部長。強面の短髪の男性。身長も高く、仕事もできて、会社的に信頼のおける存在なんだと。


この人筆頭に、要はパワハラを塩島にするようになったのはこの男だ。あだ名はバワハラ王子。「パ」ではなく、「バ」だ。




この静寂の会議室の中、遠北さんが何かを話した。




〈あちきた〉塩島、いいか、今から言うことをちゃんと聴いておけ




〈しおじま〉あ、はい……




〈あちきた〉うちの会社が今、経済難だと言うことはしっているな?




〈しおじま〉はい




〈あちきた〉会社はあらゆるアフリカの国から食品を輸入しているが、あのウイルスによって現在、輸入がままならない状態にある。そのため皆の収入源が激減している。私もだ




〈しおじま〉はい




〈あちきた〉その状況で、間もなくリストラの話が来るだろう……




〈しおじま〉え!? リストラ、ですか!?




〈あちきた〉そうだ、だが自分でも気づいているだろうが、お前がリストラされる可能性はほぼ100%だ




〈しおじま〉……




このリストラの件は、なんとなく図星で塩島はなにも言えなかった。




すると、遠北は少しニヤッとした。




〈あちきた〉そこでた、1つ条件として、ここに置いてあげる方法がある




〈しおじま〉え!?




次の瞬間、恐ろしいことを言い始めた。




〈あちきた〉このUSDメモリーを持って、サントメという国に行ってもらう。ただ、行ったらサントメの駐在員として日本に戻れないかもしれない。だけど、この会社の駐在員として行くことになるから、ここにも居られるし、お前はそのほうがいいだろう? 一石二鳥じゃないか




〈あちきた〉ただ、この2択しかないぞ選べ




このご時世、そしてサントメプリンシペ、この国はアフリカの島国なのだが、いまは少し治安が安定していると言われるが、それでもインフラ整備が整ってない事から犯罪、強盗、ひったくり、殺人などが多発している国だ。よりによって、なぜその国なんだろうか。




塩島は荒い息とともに、冷静な判断力が鈍っていた。だが、ここで仕事が無くなるわけにはいかない。なぜなら、ここで会社にリストラされるのは給料が激減しているけど、辞めるわけにはいかない。




決意を、塩島はこの2択のうち1つを選んだ。それは、サントメに行くこと。




その時の遠北の顔はニヤニヤが止まらず、少し微笑みながら、パソコンのUSDメモリーを塩島に渡した。




〈あちきた〉このメモリーは会社の大切なメモリーだ、お前はこれから重要な任務に取り掛かる。な〜に! 大丈夫さ、これを持ってサントメに渡るだけだ、しかも、アフリカだ、海が綺麗だぞ〜 羨ましいね〜




〈しおじま〉はい……




〈あちきた〉では、頼んだぞ、出発は明日だ、安心しろ飛行機代、諸々会社負担だ




そういいながら、遠北さんは静かに会議室を出た。




正直、唖然と聴くだけしか出来なかった。急な選択に、しかももう明日にはこの日本には居ない。




塩島は、なぜか今日は早く帰ることを許された。恐らくだが、他の会社員の間では塩島がサントメに行くことが広まっていて、噂となっていた。この会社では味方なんぞ居ない。そのため、話かけてくる人はいなかった。




家に帰ると、ふと思った。このUSDメモリーはなんなのか。




だが、見ることはできない。塩島の家にはこのタイプのパソコンがないから。型が少し古いタイプだった。家にあるのは、趣味用として買ったメモリー少ないノートパソコンだ。




見転がりながら、そう考えていた。そのまま寝てしまい、そして、次の日の朝を迎えた。




塩島は今日からサントメに向かうこととなった。




キャリーバッグを引きながら、空港に向かった。これから何かを待ち受けることは塩島はまだ考えてもいなかった。



ー #1 AvariciosoⅠ. 金の亡者1 ー つづく

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