第21話 ダンジョン③

今日も僕はダンジョンに来ている。


もちろんほとんどダンジョンに通っている。

決してサボっているわけではない。


だいたい2勤5休ぐらいだ。


サボってるやん!

ほぼ休みやん!

と思ったそこのあなた!


実は毎日ダンジョンには入っているんだな。


しかし、何か調子が良く無いな〜とか、昨日良く眠れなかったとか、

昨日の深爪でかすか~に足が痛い!とかで

泣く泣く引き返しているんだぞ!


毎回苦渋の決断をして引き返していたのだが、

レイ君に無理やり隷属の魔法を掛けられたよ!


1日3時間以上魔石50個(ランク問わず)のノルマを課せられて。

ひどくな〜〜〜い(コギャル風)。


隷属の魔法を掛けられた時、

ビジュアル的に首から鎖がブラーンと掛けられた。

めっちゃ太い鎖が。


船舶用の鎖か!

って思わずツッコンだよ。

重いし。


でもとりあえずそれで行けって言われて抵抗はしたんだけど

言うことを聞いてダンジョンに行ったらひどい目にあったよ。


案の定体が重くて動きにくし、

胸元にあるから邪魔だし、

体のバランスが取りにくいしで

ゴブリン相手でもHPが残り10ぐらいまでやられて

体を張ってなんとか帰ってこれた。


本気でブヒって言ったね、僕が。


レイ君的には重りという負荷をかけて

レベルアップをするというみんな大好きドラゴンボー●方式を

採用したらしいのだが、鎖はダメだろ。


負荷どころか重荷にしかならなかったよ。


そんなこんなで色々な事もありましたが、

ダンジョンの浅めの所で頑張ってスライムとゴブリン相手に

ちまちまと戦って銭を稼ぎ、やっと今LV20ぐらいかな。

LV20×0.1=+2ぐらいだね。基本ステータスに。


+2といえども、ちょっとは体が動けるようになったかなぐらいの差は感じた。

実感があるとやっぱりやりがいを感じるね。


という事で今僕はダンジョンでコボルト達と戯れています。


今までのスライムとゴブリンはリアル路線で僕の精神を

ゴリゴリすり鉢で削っていましたけど、

このコボルトはいい!


子供の体(だいたい5歳児ぐらい?)に犬の頭をもつ魔物なのだが、

このダンジョンのコボルトの顔がビーグル犬そっくりなのだ。


それが、3、4匹一斉に現れて僕を取り囲む。

わちゃわちゃ僕の足元にまとわりついて戯れる。


癒される〜〜〜〜〜〜。


よしよしと撫でようと手を出すとガブっと咬まれた。

さすがに魔物だ。いくら愛らしくとも闘争本能を持っている。


そこで僕の考えた作戦はこうだ。


さっと顔を撫でまくるナデナデ。

すっと離れてザシュっと剣で袈裟斬り。

シューっと魔石を残して消えていく。


ナデナデ、ザシュ、シュー

ナデナデ、ザシュ、シュー


名付けて“ナデザシューエンドレス”!


さらに縮めて“さすゆず”!

さすがだゆずる!の略だ。

“ナデザシューエンドレス”!関係ない!


堪能するだけ堪能して無慈悲に両断して小遣い稼ぎ。

なんという残虐極まりない奴なんだと自分でもそう思う。


ちなみに魔石の値段は1個70円。

ゴブリンより10円安い。

しかし、集団で現れるので個数は多い。

1日120個ぐらいは集まる。

だいたい9000円弱だ。

なかなかいいんじゃないかな。

心も満たされて、余裕で勝てるし。


よし、これから僕は“コボルトハンターゆずる”として

ダンジョンの王に君臨してやるぜ!


と意気込んでいたらレイ君に

「コボルトハンターって…王としては最弱だな。」

と呆れられた。


「もっと、自分の実力ギリギリと死闘を繰り広げないと、

盛り上がらないだろう、オレが」

「死闘を繰り広げる前に俺が醜態を繰り広げる事になるよ!」

死闘になる前に僕は逃げて、逃げて逃げまくるよ。

だってこれはゲームじゃないんだ。

リアルなんだから。


あと、やっぱりレイ君僕を見て楽しんでるじゃん。

「納得いかん!ペネロスを3粒要求する!」

「どんだけペネロス好きやねん!あげるけど、ほら。」


レイ君が投げたペネロスが放物線を描いて僕の手前に落ちて地面を転がる。


「僕を侮辱するのか〜〜!」

と憤り、声を荒げて抗議するもペネロスを拾い上げ食べる。


「食べるんかい!」

レイ君のツッコミも無視してペネロスをじっくり味わう。


地面に落ちたからなんだっていうんだ。

そんな事では僕のペネロス愛は揺るがないぞ


じゃあ抗議するなよって感じだが、一応声を上げないとな。

また、もらえるかもしんないし。

美味しいよペネロス、ぺろぺろ。


「じゃあ一通り茶番も終わったところでゆずるには次の試練オークに行ってみよう!」

「オーク?ってイノシシ頭の?」


「いや、豚の頭だな。」

「はいはい、あの精力旺盛な力持ちで豚肉に例えられるやつね。」


「別に精力旺盛ではないし睾丸が精力剤にもならないぞ。」

「でも鳴き声はブヒイイだよね。」


「豚のイメージなだけやん。」

まあ、異世界物では定番で弱い部類だから大丈夫か。


「ちなみに今のゆずると比べると互角かちょっと強いぐらいだぞ」

「死闘?死闘をご所望なのか!断固抗議する!何でも従うと思うな!」


僕はペネロス2粒と引き換えに死地に赴いた。

決してペネロス欲しさに命を蔑ろにしたわけじゃない事をここに記す。


そしてダンジョンに潜りスライム、ゴブリンをバッタバタ倒しまくり、

時にはコボルトと気まぐれにたわむれてオークの元へと急ぐ。


早く、早くオークの元にたどり着かなければ。

僕はジャレつくコボルトに後ろ髪を引かれながらも急いだ。


早くしないと次の話数まるまるオークとの死闘を演じさせられてしまう。

今なら、今ならこの話内ですぐ終わらせる事ができるんだ!


急ぐ事5分。やっとオークと対峙した僕は剣で切りつけが

今までの雑魚とは違う、なかなか懐に簡単には入らせてくれない。


オークの打ち付ける棍棒が地面にめり込む。

なるほどこんな打撃をうけたら僕もタダではすまないな。

まだ、動きが遅く感じるから対処できるが、

これは次話に持ち込まれる事も覚悟しなければいかんかも…


などと邪な事を考えていた時

オークが棍棒を大きく振りかぶりながら叫けんだ

「ブヒイイイイ」


「今だ!」

待ってました。オークが口を開けたところにペネロス2粒投げる!

1粒がオークの口に。


ペネロスは完璧調味料だ。その生物の嗜好に合わせた味になる。

オークはその味に、初めて味わう至高の味に戸惑ったというか

驚いた顔をして僕の前でスキをみせた。


「でりゃあ!!」

その隙に剣で首を横薙ぎに。


オークは絶命して魔石を残し消失した。


僕がレイ君にペネロスを要求したのはオークに使う為だったのだ。

ふふふ、僕がペネロスに夢中で中毒じゃないかと危ぶまれるぐらいの

印象をレイ君に与えてきたのは演技だったのだよ。


もちろん投げつけたペネロスは1回僕が2分ぐらい舐めた使用済みだ!

あやうく全部食べきってしまうのを我慢して吐き出したペネロスだ!

僕の鋼の自制心を見せつけた戦いだった。


「よかった。これで次話はまるまる違う話が載せれるぞ!」

僕は誰に言うでもなく満足げに呟き、帰路についた。

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