なにがよくなかったんだろうね「雑記」

最近、話題の青い場所に仕事で行ったことがある。


もうずいぶん昔の話になるが、当時の僕はフリーランスの真似事をしていたので知り合いのIT企業の伝手を使って、次の現場までの繋ぎとして数か月程の期間だけ仕事をした。


フリーランスなんてのは聞こえはいいが、パートナー会社だの個人事業主だの期間社員、契約型、成果型社員だの「脱法用の文言」で装飾して身分を作ってフラフラする仕事だ。ひどい時は時間を巻き戻して、在籍してた事にして欲しいとか言われた事もあったりね。


まあ、それはいいとして。


危険な噂が飛び交っていたが、適当に伝手を当たって繋ぎの仕事として探したので妥協して話を進めた。ちなみに僕に仕事が来てる段階で、実質は5次受け位でトンチキな月額単価だったのは言うまでもない。


よくあるパターンですよね。参考だけ書いておく。


中抜き30%+20%+15%+・・・・最終が10%抜きとか言うすごいやつだ。客先に派200近辺で売ります。最終請けはウチは10%の手数料程度いいんでとかいいやがる系の最悪だけど、まかり通ってる奴。


まあ、これもいいとして。


あの仕事はIT業界の仕事なのかと言われたら、いまだに疑問符はつく。スキルと知識と経験で値段を付けられたIT土方と、IT土人が首輪自慢をしながら、FだのNだの各ベンダーの系列ごとに区切られた居室に押し込まれて、空調もまともに効か無い中で、延々と無駄な資料とデータを作っていた。


・NDAの名の元に(こういう使い方する?意味わかんない)明確にならない仕様

・他ベンダー管理分は設計書を買ってみせてもらうんだっけかな?ここ記憶曖昧

・バラバラで統一されていない通常業務

・見えない全体像

・週次定例で大量の納期切れ仕事をもってくるリーダー

・責任範囲の島争い

・絡まり合ってほどけない定期ジョブのネット

・・・etc


挙げればきりがない。

そんな中で、一人の派遣の兄さんが泣きながら仕事をしていた。


彼曰く

「母が死んだ。でも現場に行けと派遣元に言われた、僕はどうしてこんな所でこんな仕事をしているんだ」


それでも泣きながらゴミみたいな紙資料をデータにしていた。

狭い居室でじんわりと汗ばみながらも、止まらない嗚咽を抱えたまま、彼は延々とゴミを作り続けていた。


自分で選んだ職業に対する嘆き。

奴隷部屋のような空間に対する憤り。

情報技術とは程遠い仕事。


「死に目にも会えなかった・・・もういやだ」


色々な感情があったんだろうと思う、彼の嗚咽は止まらなかった。言葉も嗚咽も心に印象深く残った。


程なくして、チームリーダー的な人が来て別室へ連れて行き、なんらかの話し合いがあったのだろう、彼はその日職場から帰った。


・・・どこまで帰ったのかは知らない。


恐らくそのまま派遣元へいったのだろうとは思う。


ただ翌月かは忘れたが、彼の姿を見る事は無くなった。

きっと客先で迷惑をかけたという大義名分で下請け特有の重圧を受けながら去ったんだと思う。もしかしたら業界ごと去ったのかも知れない。


僕の見た短い期間でも、沢山の業と人生と「何か」を背負って、あのシステムは出来ている。


最近見たお偉い様達の「クソみたいな嘘会見」を見ながら思い出した話でした。


あの時、嗚咽していた彼の人生が少しでも幸せに転がっていますように、というかすでに幸せを掴んでいますようにと少しだけ願った。

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