第5話 Aパート

第5話

Aパート


ミキサーの電源を入れ、自分の声を確認して「よし」と呟き配信開始ボタンを押す。


4日目1枠目

すっかり慣れた挨拶と自己紹介の口上で配信を始めると、『誰?』『来るとこ間違えました』『ヲタボからショタボに進化した』等馴染みになったリスナーから声が変わった(良くなった)事を指摘され、機材を新しくしたこと、発声練習を始めたこと、実力不足を認めつつもトップの#22に近づきたいと決意を述べ、「こんな僕だけど……」と応援を求めてリスナー側からも紅葉が配信に真摯に向き合う姿勢と日々成長する姿を好意的に受け止められる。


その流れで次枠の企画『ド新人バ美肉限ヲタライバー、高速詠唱で外郎を売る! ノニもあるよ!?』を宣伝。センスを馬鹿にされつつも頑張ってサムネを作ったことをアピールする。


外郎売りの説明。


「『外郎売』は元々歌舞伎のある演目の中にある透頂香っていう薬を売る薬売りのセールストークで、その薬売りの屋号がういろうだったから『外郎売』って呼ばれてるの。で、その透頂香に舌が回って滑舌が良くなる効用があって、それをアピールするために早口言葉が入ってて、それが声優さんや声のお仕事をする人の練習用にちょうど良いっていうね、あれです」


カチカチとマウス操作して外郎売が載っているページを開く。


「今回の企画ではこれを読んで、噛んだり詰まったりする度にノニジュースって不味いと評判のジュースを飲むことになってるんだけど…… 実は僕もさっき初めて『外郎売』の全文を見て、今ちょっと後悔してるんだ…… しかも、このノニジュースを飲むのも初めてっていうね……」


草コメント、冷やかし、からかいながら励ますコメントがいくつか付く。


「はい、それでは、次の枠でお会いしましょう! おつくもー!」

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