第3話 Aパート

Aパート


初日で酷い配信をしてしまい落ち込む紅葉はリスナーからの宿題にも全く手がつかず、一睡もできずに朝を迎え、フラフラの状態で登校する。

1限目の授業が始まり出欠を取る教師、机に突っ伏す紅葉は名前が呼ばれても反応できず、怒られそうになるところを雪乃に助けられ保健室で休むことになる。

保健室へ向かう廊下で昨日の配信のことを打ち明ける紅葉は上から目線で指示するようにものを言うリスナーに不満を言うが、雪乃はそのリスナーを新米配信者に配慮する良いリスナーだと諭し、魂オーデの参加の決意をもう一度紅葉に問う。


「その人のこと、私は良いリスナーさんだと思う。……少なくとも空気を読めないアキバくんよりは。いつもコメント拾う時気を使ってるんだから」(雪乃は以前からクラスメイトの紅葉とリスナーのアキバが同一人物だと知っていた)

「ええっ! そんなぁ……」

「あのね、秋月くんはサムネもプロフィールも作っていない人の配信を見に行く? 立ち絵に釣られて見に行ってバ美肉の人だったとしてもそのまま配信を見続ける? トークもおぼつかない新米配信者さんにアドバイスできる?」


紅葉をジトッと睨みながら冷たく言い放つ雪乃。


「うっ、それは……」

「いくら初めて配信する秋月くんだとしても、最後まで配信を見てコメントやアドバイスもしてくれるリスナーさんを悪く言うのは許さないから」


雪乃は真剣な目で紅葉の瞳を見つめる。


「その人、プロフィールとサムネを作るのが宿題だって、またなって言ってポイントをくれたんだ。きっと、今日も来てくれる…… あれ? つまり、僕の、初めてのリスナーさん……?」

「そうよ」

「うん…… 僕、もうちょっとだけ、頑張ってみるよ」


紅葉の言葉を聞いて目を細めて微笑む雪乃。

決意を新たにする紅葉に雪乃は『詠永ねいじゅの秘密のネタ帳』を渡す。

(ネタ帳は雪乃が紅葉のために数日掛けて書き上げたもの。ねいじゅが配信で使っているデザインがそのまま使われ、所々にねいじゅのラフな自画像に吹き出しで紅葉を励ます言葉や紅葉に向けたアドバイスが書かれている)

午前中保健室で休んで午後は早退した紅葉はネタ帳を見ながら改めてリスナーの宿題に取り組み、自己紹介とプロフィール、配信用サムネを完成させる。

配信直前、ネタ帳の表紙の裏に描いてあるねいじゅの励ましの言葉を見つめ。震える指先で配信開始ボタンを押す。


2日目1枠目(18:00~18:30)

完成した配信サムネ『猫被でゅお魂オーディション#99 ♂ツクモ♀のゼロから始める限界オタク系バ美肉ライバーへの道』を使って配信をはじめ、自己紹介とプロフィール、オーデ参加への決意をたどたどしくもしっかり語り、数名のリスナーを獲得して手ごたえを感じる。

(+6フォロワー、+1300ポイント)


2日目2枠目(21:00~22:00)

プロフィールや参加動機を一通り喋れるようになって臨んで配信開始、しばらくして昨日の宿題を課したリスナーが現れてサムネの出来に悪態をつきながらも紅葉の努力をねぎらう。

プロフィールや志望動機についてやり取りを交わすあいだに雑談に参加するリスナーも現れ、貰えるポイントも少しずつ増え始めて、配信に楽しみとやりがいを感じるようになるうちに終了の時間が近づき、惜しみつつ配信を終了する。

(+8フォロワー、+1800ポイント)

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