第8話 

 働きながら、俺はいろんな豆知識、特に薬草や人々の生活についての知識を同僚女性から教えてもらう。


 日本の女性は会話するだけで一苦労するのに、みんな近所のおばちゃんみたいにフレンドリーだった。


 聞けば、現地の男冒険者は馴れ馴れしく、酒臭かったり体臭がするので、真面目で酒も飲まない硬派で清潔な俺のほうが好感が持てるという。

 

 はっきりそう言われると照れるな。


 そんなこんなで一週間ほど休みなしで働いた。


 生活費もたまったしかなり生活にも余裕が出てきた。


 だが宿屋の女将さんに言いたいことが一つだけある。


 あんたの料理、レパートリー少なすぎるだろ。


 一週間、パンとシチューはさすがに飽きるわ。


 ※ ※ ※


 久しぶりに迎えた異世界での休日。


 甘いものや油が貴重な異世界だ。


 俺は赤身の多い骨付き肉を食べる。


 少し高い値段だが仕方がない。


 「うま!」


 肉の味がしっかりしているので十分美味かった。


 その言葉にガタイのいい店主は笑った。


 「美味しそうに食べるねぇ」


 「宿屋でシチューばっかり食べていましたから」


 「そりゃ、ここの奴ら全員が大体そうだろう。もはや俺の体は女将さんのシチューでできているさ」


 「僕もそうなりそうです」


 俺は愛想笑いをうかべて店主は笑う。


 居心地のよい時間だった。


 俺は次に焼き鳥の串を頼む。


 その折に一人の峰麗しい耳の長い女性……俗にいう金髪美乳エルフの弓使い冒険者が隣に立つ。


 彼女は凛とした声で「隣……いいかしら?」という。


 俺はどうぞといって適当に頷く。


 彼女は「どうも……」といって椅子を引いて座る。


 彼女は骨付き肉を食べた後、溜息を一つ吐く。


 「なにかあったのかい?……話したくなければ、別にいいが」と店主がきく。


 「別に冒険自体は私一人でなんとかなっているし……ただね……」


 「ただ?」


 「ここでいうのもなんだけど、毎日、肉と野菜ばかりのシチュー、たまに果物でいい加減、他のものが食べたいわ。それに雑魚魔物は異世界人が狩ってくるもんだから、新しい種類の魔物を狩ろうと思ったけど、その魔物に対して情報が少ないから、どうしたものか悩んでいたのよ」


 「俺は飲食店だしなぁ……」


 「ねぇ、あなたもみたところ異世界人だけど冒険者にならないところを見るに他の異世界人よりは頭がキレるわね……何か案はない?」


 彼女の綺麗な翡翠色の瞳が近寄って俺はドキドキした。


 



 


 

 

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