ギャルゲのモブになりたいです。

風鈴 華山

プロローグ

第1話

 異世界。それはオタクならば誰もが知っている物。

 叶わないと知っていながらつい「俺が異世界行ったらな〜」と夢想してしまった人も居るだろう。

 しかし、異世界をこの目で見た者としてハッキリと言おう。…現実は甘くない。異世界も想像するなら理想の世界だが、実際行くとクソのような現実。寧ろ現代日本よりキツイ。飯は不味いし衛生環境も悪い。ラノベやマンガのような美男美女ばかりでは無いし、王侯貴族なんぞ関わってたら人間不信になってしまうほど腹黒ばかり。

 勇者として異世界に行き、お約束通りにチートスキルを貰ったが、訓練しなければ使いこなせないのは当たり前。その訓練も文字通り血反吐を吐きまくった。

 戦場に出れば敵の魔族からは殺されかけるし、モンスターは怖いし、野盗を始めとした犯罪者や殺人鬼なんかも容赦なく狙ってくるし、魔族側に寝返った貴族達からの暗殺者も怖かった。

 そんな世界で情けをかけたら危険なのはこちら側。日本で学生として暮らしていたら一生縁がなかったであろう、自分の手で生物に刃物を突き立てる感覚は恐ろしくて、初めのうちは1回してしまう毎に吐いていたが、一ヶ月もすれば精神がすり減り人を刺しても何も感じなくなっていた。

 それに、昨日隣で馬鹿笑いした奴が物言わぬ躯になることもザラで、いかにチート能力を持った俺で異世界物のラノベや漫画も死ぬ時は呆気ないとありありと見せ付けられたりもした。

 こうして多くのものを失いつつも、魔王を倒した俺は褒美も程々にお払い箱として日本へと送り返された事で戻ってこれたのだった。

 そんな殺伐とした経験をしたからか、召喚される前は大好きだったRPGや異世界物のラノベや漫画は前ほど楽しめなくなり、現代物のギャルゲーばっかりにのめり込んでいた。無論、現代ファンタジー系にもだ。


 だからこそ、すぐに気付いた。転生した先が前世でさんざんプレイしまくったギャルゲーの世界だということに。

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