第44話 アランの弟子
なんやかんやで危ない場面もなくドラゴンを倒し、俺たち四人はダッシュで地上に戻った。
第二十五階層よりも下まで行くとなると、さすがにこのメンバーでも簡単にとはいかない。何度も休憩部屋まで往復して少しずつ攻略していくことになる。
俺は別に構わなかったが、冒険者ギルド長であるシグルドはずっと留守にはできない。ホラスとアメリアも抜けているから、今頃ギルドはてんやわんやになっていることだろう。
階段を上りきって大岩から出ると、ダンジョンにいるのだという緊張感が一瞬で消え、どっと疲れが襲ってくる。
あー……マジ疲れた。
「結局異変は見られなかったね」
大岩からまっすぐ伸びる道を歩きながら、シグルドが残念そうな声を出した。
「ギルド長、異変はない方がいいんですから、がっかりしないで下さい」
「だから他の冒険者からも報告上がってないんだから行っても無駄だって言っただろ」
ドロップ品は山分けとはいえ、オーラも魔法もアイテムもかなり使った。労力に見合っていない。骨折り損だ。
「いやいや、実際この目で確かめるのが大事なんだよ」
「そうですね。冒険者の皆さんも、ギルド長が直接調査したと知れば安心しますから」
「安心ったって、この前の異常は公開してないんだろ?」
「そうなんですけど、下層のモンスターが上がってくる現象の報告が少しずつ増えてきているっていうのは、やっぱり不安に繋がるんですよ」
受付をしているアメリアは、その辺、肌で感じているんだろう。
「報告数も公開してないだろ」
「それでも噂は立つからね。話しに上る機会が増えれば薄々察するものさ。今回の調査だって、表立って発表したりはしない。噂になってくれればそれでいい」
まあ、その気持ちはわからんでもない。
案内する側の俺も、噂話は気にしているからな。
下手な公式発表よりも、案内人の間の噂の方が情報が早いし、
こうやって大通りで話をしているのは、噂を流すためでもあるんだろう。
ユルドの最強パーティが歩いていれば、そりゃ注目を浴びるからな。こいつがダンジョンに潜るってこと自体、珍しい事でもあるし。
と、そこへ、立ちはだかる人影があった。
ごつい
帰還早々にこいつに会うとか、最悪だ。
「ギルド長、帰ったのか」
「うん」
「どこまで行ったんだ?」
「第二十五階層のボスを倒したところまで」
「またこの半端者を連れて行ったのか?」
ギロッとアランが俺を
「うん。クロトに案内してもらった」
はっ、とアランが鼻で笑った。
「どうせまた二十階層で怖じ気づいたんだろ? 相変わらず
「そうだね。次はお願いしようかな」
ここで話は終わりかと思いきや、アランは口を閉じずに自慢話を始めた。
「じゃ、俺は先に帰るわ」
相づちを打っているシグルドの後ろで、アメリアとホラスに伝える。
早く風呂入って寝たい。
「ああ、可愛い弟子たちの元に早く帰りたいわけだね。わかったよ」
くるりと後ろを振り返ったシグルドが、ポンッと手の平を叩いて言った。
「ちっげーし!」
あいつらの事なんてどーでもいいわ。
「弟子と言えば、お前の弟子たちは相当出来が悪いらしいな?」
アランが
「まだ自力で
「だからなんだよ」
「いや、さぞかし教えるのが大変だろうと思ってな。いや、弟子の方もお前に教わるのは苦労するだろうからお互い様か。その点俺の弟子たちは優秀だぜ」
アランがぐいっと後ろの三人を前に押し出した。
なるほど、こいつらはアランの弟子なわけか。
高級な装備品を身につけている三人は、師匠に似て傲慢な
その首には
「こいつらはもう自力で
「あっそ」
心の底からどうでもいい。興味がない。
「なんだと!?」
俺の態度が気に食わなかったのか、アランが歯をむき出して、つかみかかって来ようとする。
そこにシグルドが割り込む。
「弟子をとったんだね。案内人が弟子をとるなんて、それも一度に三人もとるなんて珍しいね」
「そろそろ後人の育成もする頃合いかと思ってな」
「僕が留守にしてたから、まだ師弟認定は暫定になってるよね。ギルドに戻ったらすぐに書類にサインするよ。……ところで、君たちの装備を見るに、これからダンジョンに潜るんだと思うんだけど、行かなくていいのかい?」
「ん? ああ、これからこいつらに第十五階層のボスを見せてやりに行くんだ」
「そうなんだ。気をつけてね」
シグルドが手を振って、会話を強制的に終わらせた。
アランたちが大岩へ向かうのを見て、シグルドとアメリアが、はぁ、とため息をついた。
「あれ絶対クロトさんへの対抗心からですよね」
「なんであんなにクロトを目の
知るか。
シグルドがこっちを向いたが、俺には全く心当たりがなかった。
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