第21話 再構成
第六階層にはスケルトンが出る。
「うわ……本当に
「……元は人間?」
「違うと思いますわ」
ゴブリンロードの部屋から降りた先、二つ目の部屋の入り口で、三人はぼそぼそと話していた。
部屋の中では、剣と盾を持った骸骨が一体、カタカタと小さな音を立てて歩き回っていた。軟骨がないから関節で骨と骨がぶつかるのだろう。
「死体を相手にするみたいで嫌ね」
「
下はこんなもんじゃないぞ。
「怖じ気づいてなんていないわよっ」
「……行く」
情けなく
身体強化だ。人間と違って、獣人は生まれつきこの特性を持っていて、訓練による伸びしろも大きい。
それに加えて猫――じゃなくてライオンか――なら、近接特化だろうに、なぜ魔法使いなんてやっていたのか。
「いいの?」
「……うん」
ティアが
スケルトンが気がついて体を向けるがもう遅い。飛び上がったティアはスケルトンの
吹っ飛ぶ頭蓋骨。
しかし、頭部を無くしたスケルトンはそのまま剣を振り上げた。
それを
逆に押し返し、
ティアの拳は骨を突き破り、背骨を折った。
スケルトンの上体が床へと倒れる。
だが上半身を無くしたスケルトンは、
「……キモい」
ティアは跳躍して下半身を跳び越え、床に転がった上半身を踏み抜いた。
バキバキにヒビが入っていた肋骨は粉々に砕け散り、ティアのブーツがスケルトンの赤い核を踏み割った。
糸が切れたように崩れ落ちる途中で、スケルトンは霧となって消えた。
「……非効率」
ティアが手を握ったり開いたりしながら眉を寄せた。
「次はあたしが先に行くわ。……行きたくないけど」
「……わかった」
次の部屋にはスケルトンが三体いた。集まって歯をカタカタ鳴らしている。
宣言通りに一人部屋に飛び込むレナ。
「でやぁぁぁっ!」
横に両手剣を振り、三体まとめて両断する。
三体の背骨が砕け散った。
「ティア!」
空中に飛び出してきた三つの核を、跳躍したティアがキャッチ。
またブーツで踏み潰すのかと思いきや、そのままゴリッと手の中で砕いた。
えげつねぇ……。
クルミじゃないんだぞ。
うわー、と俺は引いていたが、ティアはにかっと笑った。鋭い牙がちらりとのぞく。
「……早い」
「いい感じね」
「では次は、わたくしがいきますわ」
三番目の部屋は五体。
「えいっ」
なんとも可愛らしい声と共に通路から放たれたのは、五本のアイス・アローだ。
氷の矢はスケルトンの肋骨の隙間を通り抜け、正確に核を撃ち抜いた。
「いっえ~い!」
「……いえーい」
「いえーい、ですわ」
三人が両手を上げて合わせた。
進んでいく順番はこれまで通り、レナ、シェス、ティア、俺の順だ。
だが、コントロールのいいシェスが魔法攻撃を始めたことにより、レナに射線を邪魔されることはなくなった。前にいるレナを
シェスの白魔法も中々だったが、どうやら黒魔法の方が得意らしい。あんな細い隙間を五本も同時に通すなんて、そう簡単にできることじゃない。
近接攻撃を始めたティアも、後ろからの敵に柔軟に対応できるようになった。
身体強化をしながら魔力を
そこにシェスの補助魔法や援護射撃があればもう敵無しだった。
ティアが先頭になれば通路の向こう側の気配も探りながら進めるから、もっと速く進めるだろう。
だが、安全を第一に行くのなら、挟み撃ちを極力
どうやら三人にとっては、初回に挟撃されたことがかなり衝撃的だったのだろう。
あの時はティアをかばってしまったのが逆に良くなかったかと思ったが、それでも十分強烈な体験になったようだ。
スケルトンを倒すにはシェスが魔法を使うのが一番手っ取り早かったが、三人は様々な攻撃を試していた。
近距離二人と遠距離の連携を探っているのだ。
こう見ると超攻撃型のパーティに見えるが、
というか、ティアとシェスは自分の特性と合っていない戦い方をしてきたお陰で、戦闘の幅が広がることになったんだな。
レナは戦い方を変えていないのもあって、三人が互いの攻撃のタイミングを把握するのにさほど時間はかからず、第六階層を突破する頃には、今までもこう戦ってきたのかと思える程に連携が取れていた。
ゴブリンロードに苦戦してたのはなんだったのか。
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