秋の遠足に出発

 午後から学校出発→山荘山散策→飯盒炊爨で晩ごはん→肝試し→学校到着

 というスケジュール。


 学校にバスが停まっていた。クラスごとのバスで一安心。席は決まっていないので皆思い思いに座る。

 僕は目で愛を探す、居ない。まだかな?とすぐ音もたてず僕の横に来た。

「太陽くん 愛!」と凛ちゃんもやって来た。

「やべーワクワクしてきた」春斗と木下くんも。


「よしっ!一番後ろ取るぞ」と意気込む春斗だったが、僕らは二人がけ縦3列となった。


 愛と凛ちゃんは窓側が良いらしい。てっきり女子は二人で座ると思っていたのに。

 愛が窓側に座り、僕は凛ちゃんに押し込まれ愛のとなり

 凛ちゃんの隣は春斗

 木下君は一人がいいと言った。


 暫くの間、凛ちゃんと春斗が後ろを向いてぺちゃくちゃおしゃべりしてきたが、「あ、やべ酔いそう」「私も」と二人はおとなしく前を向いた。


 愛に目を向けると、まただ......僕を見て微笑む。あろうことか今はバスの隣同士。ものすごい至近距離での微笑。ぽっぽせざるを得ない。


「飯盒炊爨ってご飯だよね。おかずって?」


「カレー作るんじゃなかかったかな、たしか」


「愛はカレー好き?嫌い?」


「好き」


 あぁぁぁだめだ。カレーの話なのに何 僕は陰じゃなく陽じゃなく変態だ。

 を聞きたいだけで質問するなんて。どうかしてるぜ厄除けが。


「どうしたの 太陽 酔った?」


 君に酔ってるんだよー。僕帰りまでもつかな。


 山荘の家に着き荷物をクラスごとにまとめ、水筒を持ち散策へと出かける。

 班で出発だ。僕らは5人で班になっていた。

 こんな僕が何不自由無く班になれたのは奇跡だ。神様って居たんだ。


 山道を歩く、愛が自然と僕の腕に腕を絡める。愛の得意技だけど、慣れない。何度されても暴れ狂う鼓動は止まらない。山道だと、若干腕を絡めると歩きにくいのだが、愛はお構いなしだ。他のメンバーも気にしていない。気にしてるのは僕だけ?これって普通なの?

 愛は疲れてきたからか。よし、僕がしっかりリードしよう。


「ギャーッ」

「なんだよ春斗」

「虫!虫」

「そりゃ虫だらけだよ 山だもん」

「そうだ。いずれ昆虫食の時代が来るかも、今日試す?」

 と僕はコオロギらしき虫を摘んだ。

「やめてー」

「あ、ごめん」


 愛も虫駄目みたい。かわいい.....ちょっと前なら虫にも知らん顔するイメージだったが、すっかり女子な愛である。


 晩ごはんの支度が始まる。

 僕らは火の準備、愛と凛ちゃんは米を洗い、野菜を切る。


「いいですね。こういうのもたまには。」

「木下君山に来た爺さんみたいじゃん」

「失礼だぞ、師匠だぞ」


「楽しい?」

 と要くんがやって来た。

「あ、うん。要くんはもう食べた?」

「まだ、今はもう煮込んでるから誰かが混ぜてる。愛は?」

 愛をお探しか......。


「出来た?火」

 二人が戻ってきた。


「あれ、何してるの?自分のご飯は?戻りなよ。怒られるよ女子に。」

 と勢い良く凛ちゃんに言われ要くんは去った。


 なんだ?愛は要くんのことはどうなんだろう、このあいだ二人は屋上で何を話したんだろうか。もしかして......もう内緒で付き合ってるとか.....。

 ややこしい彩花の元カレって代名詞がついちゃったから公にできないとか......。

 だけどそもそも愛は男なんていらない!宣言していた。

 あれは.....男を寄せ付けないためか本心なのか。

 急に楽しかったはずの時が曇りだしたのだった。


「食べた班から片付けねー!次は肝試しだよ〜」

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