滅びに向かう

私を取り巻く人々の雑踏に起こされる。私を囲んで皆が談笑しに集まってきた。それはまるで街頭に群がる羽虫のごとく。

と悪態をついてみたものの私を中心に回るものをみると悪い気はしない。それに皆としゃべっているとなかなかに楽しい。いや楽しくてしょうがない。

授業中に寝ることが私の登録商標とでも言わんばかりに堂々と悪びれず寝ていることを話題に話をしていたら時間など消し飛ぶ。

可能性に満ち溢れ誰もが慕うカリスマ性も持ち合わせ希望に満ち満ちていた。

まさか希望と思っていたものが薄い薄いメッキで。絶望という本質を覆い隠していたなど知りもしなかった。



ここからは「たからもの」がかすれてしまって記憶を呼び起こすことはできなかった。

バッドエンドという単語が似合いそうな現実。

明らかに灰色の空気。壁に寄りかかって足を放るように座る無気力な私。

生きているのか生かされているのか死んでいるのかわからない。常に自分にしか聞こえない。

自分にしか見えない。そんな存在と調和して死んでいる。脈がある程度には人の形。

目の前にペンがある。大腿部に刺してみる。痛みと出血によりすこしは人に戻ったように感じる。

ふらふらと先ほどけがをしてしまった右足を摺りながら歩く。すると「たからもの」を見つける。それはまさに地獄に垂れた一本の糸のように映った。急いで「たからもの」を手に取る。一刻も早くこの地獄のような世界から去りたい。

去ってはいないのだがともかく目を背けたい。背中に自分にしか見えないゲルニカの絵を気持ち悪くしたような異形の怪物が背中にのしかかる。

最適なスピードで「たからもの」に急いでしがみつく。まるで終電に駆け込むように0,1秒でも早く滑り込めるように。

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