怪物から助けてくれた三人の美少女は宇宙警備隊員で、止むに止まれぬ事情から奇妙な同居生活が始まり、ちょっぴりエッチな方法で変身して戦います

@novak

Preface 宇宙警備隊、降臨!

 漆黒の絨毯に散りばめられた小さな宝石のように、輝き、煌めき、瞬く満点の星の下…………………


 ピシュゥーーーーン!ピシュシュシュシュシュシューーーーーーーン!


 耳をつんざく高周波の破裂音?だか炸裂音?だかが轟き、目が潰れるかと思うほどの閃光を同時に浴びて、俺は一瞬目まいを起こしそうになった。


 人っ子一人いない深夜の公園。俺の目の前で街灯に照らされているのは、見知らぬ三人の少女。彼女らはいずれも、コスプレ?と勘違いしてもおかしくない奇妙な同じ服を身に着けている。


 ぱっと見は、高校二年の俺と同年代のように思える。でも、普通の少女じゃない。いや、つい数秒前、恐怖で立ちすくむ俺の元に駆け寄ってきた時はごく普通に見えた。取り立てて派手でもなく、かといって地味でもなく、女子高生の平均的な私服姿だったんだから。


 そのうちの一人が、背中のデイパックを地面に降ろし、中に手を突っ込んで何かをいじりだしたと思ったら、いきなりあの音と光が。その直後、さっきまでとはまるっきり違う、見たこともないお揃いのコスチュームをまとっていたんだ。


 体にぴったりフィットして、ラインがはっきりくっきり出てる銀色地の上下に、深みのある紅色のロングブーツ。上着には襟、胸、腕に同じ深紅の太いライン。襟からは、やはり深紅のネクタイがぶら下がり、ネクタイピンにしては大きすぎる、青くて丸いボタン状の綺麗な石がくっついている。

 腰に付けた黒のベルトには、刀や銃に見える武器のような物だったり、ウエストポーチみたいな小型バッグだったり、形の異なる道具をそれぞれが装着していた。


 夢?いやいや現実だ!でもこれって、特撮ヒーローの変身シーンにそっくりじゃないか!

 そのうえ彼女たちは、三人が三人ともまごうことなき美少女で、新進の女優やアイドルやモデルだと紹介されても何の違和感もない。


 身長一七〇センチの俺よりも少し背が低く見え、顔にかかったセミロングの金髪を左手で後ろに流した子は、日本人の顔立ちにも近いけれど、白人とのハーフかと思えるほど色が白く、目鼻立ちが整っていた。

 でも、美人にありがちな勝ち気さや冷たさはつゆほどもなく、つぶらな青い瞳が少し垂れているせいか愛嬌や、親しみやすさも感じさせる。スタイルは抜群だ。大きすぎも小さすぎもせず、俺としては理想的な形の美乳!くびれたウエスト!適度に突き出たヒップ!それらのシルエットが、ぴちぴちのコスチュームからしっかり浮き出ている。


 その隣……ひょっとしたら俺より身長が高いかもしれない赤毛でショートヘアの子は、いくらか切れ上がった目、細い鼻筋、薄い唇……凛とした雰囲気を醸し出し、金髪の子よりもっとエキゾチックなルックスと言える。

 目力があって、ちょっと近寄りがたい雰囲気を醸し出し、どことなくセクシーさも漂わせ、こういうのをクールビューティーって言うに違いない。すらりとしたスタイルだから、胸は自然と控えめ。ヒップだけが大きくプリンと自己主張している。


 デイパックを背負ってた子は一番小柄で、ブルーのロングヘアをふうわりした巻き髪に整え、アンティークドールのような可愛らしい風貌だ。それより何より特筆すべきは、ベビーフェイスとはあまりにアンバランスで、スイカかパイナップルでも入ってるんじゃないかというほど迫力満点の爆乳だろう。

 あんなすごいおっぱい、例え衣服で隠されてたって、ネットやテレビ以外の生で、しかもこんな間近で見た経験なんて今まで一度もない。あぁ、ありがたや、ありがたや……って、俺のバカ!この非常時に、のほほんと見とれてる場合じゃないだろが!

 そもそも俺は、それほど熱烈なおっぱい星人じゃないんだから、しっかりしろ!!


 気持ちのスイッチを切り替え、俺は三人の向こう側にいるおぞましい存在へと視線を移した。

 彼女らが特撮ヒーローなら、切っても切れない不可欠の要素が怪獣や怪人……まさしくそれにズバリ当てはまる人型の不気味な化け物が、俺たちの数メートル先に立っている。


 プロレスラーみたいなでかい図体をしてて、イボに覆われた全体の膚がぬめぬめした深緑色。頭は人の三倍以上あり、丸く突き出した両眼は顔の上半分を占め、左右で違う方向をキョロキョロと見ている。まるでカメレオンだ。

 顔の下半分はゾウにそっくりで、筋肉質の長い鼻が胸の辺りまでだらりと下がっていた。

 この鼻よりは短く、太さも一回り細い管状の突起物が、上半身のあちこち十数か所から生え、海底でゆらめくコンプのように上下左右にゆらゆらと蠢いている。

 鋭いかぎ爪が付いた手の指は五本あり、両腕は太くたくましい。

 両足は、どっしりしたボディを支えているにしては不釣り合いなほど細く、黒いショートブーツのような物を履いている。

 ゾウみたいな鼻と管の先端からは、「プシューブジュブジュ……プシューゴボゴボ……」といった気味の悪い呼吸音が聞こえてくる。


 こんな常識外れのおぞましい相手に、公園でいきなり襲われたんだから、血の気が引いて体が動かなくなっても当然だ。

 金髪の子が、俺に顔を向けた。


「あなた、危ないからしばらく動かないで!」

「え?あ……う、うん」


 頭がパニック状態になってた俺は、鋭い口調に気圧され、口ごもりつつうなずく。

 まあ、動くなってわざわざ言われなくても、俺は腰が抜けて地面にへたり込んでるんだから、どっちみちこの異様な光景をただ見ていることくらいしかできない。


 彼女は怪物に向き直り、腰の刀を抜いた。厳密に言うと、それは俺たちの知ってる刀じゃなかった。刃は反りのある日本刀の形をしているものの、抜いた途端に全体が青白く発光したんだから。


 この日、この時を境に、ごく平凡な高校生活を送っていた俺が、ハンパない事件に巻き込まれ、遠い宇宙からやってきた美少女たちとの共同生活を始めるなんて、想像つくと思うかい?

 唐突にここまでまくし立ててしまったけど、状況をもっと詳しくわかってもらうためには、時間を少し巻き戻した方がいいかもしれない。

 せめて、今日の放課後あたりまでは……。

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