第3話 アラサー幼女(仮)父母に驚きました。

ベネディクトは私が起きたと知って慌てて駆けつけたらしい。


「それにしても、なんでおれに手を取らせたんですか?」

「貴方の決意をちゃんと図るためよ」


部屋の片付けが終わっていないそうなので、

"自分のことをまず完璧にこなしなさい"と

高飛車な態度で言い放ち、部屋に戻ってもらった。


これ以上は私の羞恥心が抑えられなかったんですもん!


「…もう、誰もいない?」

「いえ」

「ひ」

ほんっとに驚きました‼︎

「失礼致しました。メリー、ただ今戻りました。こちら、本日のお召し物でございます」

「ありがとう」

え、なんでございましょう。

また、驚いた顔。

「いえ、なんでもございません」

やっぱり、性格に差があるのかも。

ベネディクトも…ベネディクトの場合は多分貴族のお嬢様っていう存在に対するものなのだろうけど。

お礼って、こっちだと言っちゃダメなのかもなぁ。承認なのだから当然でしょ?みたいな態度じゃなきゃダメなのかな。


「先程お嬢様がお目覚めになったことを旦那様と奥様にお伝えしましたので、もうじき、お帰りになると思います」

はい?あ、あ…。はぁ!!!???


この世界では子供が目覚めたら保護者に連絡が行くシステムなの!?

え、30年生きてきたけれど、聞いたことも読んだことも、見たこともないですよ!


と、その時。

ドバーン‼︎と、扉が開いた。

時の流れが遅くなっているかのよう。

扉から純黒の髪、真っ青な瞳の美女が入ってくる。そして───


「アリシアぁぁぁん!うぇぇぇん、ようやく起きたぁぁぁぁぁん!」

今、私に泣きながら頬擦りしている。


「おかえりなさいませ、奥様」

これが、母。

まあ入ってきた時からわかってはいた。

フラグだったんだよね。

おねーさん、知ってた。


「こらこら、リリア、病み上がりの子供の前で大きな声を出すんじゃないよ」

父よ、貴方の声も、十分に大きいです。


「だって…もう2年も目覚めなかったのよ!?心配したんだからぁぁぁん」

お母様、胸、胸、窒息する、ギブ、ギブゥッ


あッ、死んだ…自分の体が見える…へえ、私って黒髪に赤い目をしてるのか。

可愛い顔立ちだなぁ。顔が真っ赤だけど。


私、お母様の胸で窒息死たのか。中学校の頃のクラスの男子の夢だったっけ。今私、君の夢を叶えたよ。


って、死ねるかぁい!

「お母様、苦しいです」

「まあ!ごめんなさい、アリシア。大丈夫?平気?」

「平気です」


「アリシア、何かあったらメリーに伝えるんだよ。いいね」

「ごめんなさいね、アリシア。仕事に戻らなくちゃいけないの…ううぅ。明日は必ずお休みもぎ取ってくるからね。待ってて!」

「はーい…」

ばたん。

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