第7話トレイン・ボム

爆炎をあげて自爆したデスペラード・ダークフリーデン。しかし爆発はしたものの、機体はかろうじて黒く果てたその姿をとどめていて、そのまま地面に落ちた。

『ハア、ハア・・・、なんとか被害を最小限に抑えることができた・・・。』

アゴノの「ダウンストームダウン」とドームに張ったバリアのおかげで、デスペラード・ダークフリーデンの自爆からドームを守り抜くことができた。

「だが、またしてもドルクスには逃げられたな。」

「いつものことだ、ドルクスはそう簡単な相手じゃない。」

アゴノとアリゲーターナイトとグリムディーンが着地して、デスペラード・ダークフリーデンをのぞきこんだ。

『誰かいるが・・・、すでに死んでいる。』

アゴノはデスペラード・ダークフリーデンから、一人の死体を外へ出した。死体は全身が熱でただれて、元が誰なのかわからなかった。

「酷いありさまだ・・・。」

「ああ、両手両足を失っている。かなりすさまじい熱だったんだな。」

『違うぞ、グリムディーン。骨格から見て、どうやら両手両足がないのは生まれつきなようだ。』

「生まれつきだと?それじゃあ、こいつはどうやって操縦していたんだ?」

『思考操縦だ、脳とコンピューターをリンクさせて、思った通りの操縦を乗り物にさせることができる。デスペラード・ダークフリーデンはそうやって動かしていたんだ。』

「ふーん、それにしてもこの男もバカで哀れだな・・・。両手両足というものを失いながらも、運命を乗りこえて楽しいことができた可能性がわずかながらにもあったはずなのにな。」

「グリム、そんなこと言うな。気持ちはわかるが、この男は自らドルクスと関わる道を選んだ。それは私たちでは、変えられないことだ。」

「そうだな、せめてお前の背負った運命が地獄での裁きを、和らげることを祈っているぜ。」

『じゃあ、後は警察に任せるとしよう。さっきデカンクラッシュから連絡が入ってな、下僕たちは全員避難できたようだ。』

そしてアゴノとアリゲーターナイトとグリムディーンは、ドームを後にするのだった。










一方、撤退した刹那たちは街中の路地をひっそりと歩いていた。

「これからどうする、刹那?」

「とりあえず、信の会社に戻りましょう。」

そして刹那たちは信の会社に到着したが、中が慌ただしくなっていた。

「ねえ、何かあったのかな?」

「私が聞いてきましょう。」

松野がそう言って近くに居合わせた人を捕まえて、話を聞きだした。

話を聞きだし終えた松野は、重い表情で戻ってきた。

「どうだった・・・?」

「それが・・・、信さまが亡くなられたそうです。」

刹那たちはとてもおどろいた、しかしドルクスただ一人は平然としている。

「それは本当なの・・・?」

「はい。それで信さんが亡くなられた場合、この会社がある人に渡ることが取り決められた誓約書が見つかり、それでみんなこの会社は倒産したと言っております。」

「そんな・・・、こんなことになるなんて。」

「それでこの会社が誰のものになるのか・・・、その人物の名はMr.ドルクスというのです。」

「Mr.ドルクス・・・!!もしかして・・・」

刹那たちはドルクスの顔を見た、ドルクスはニヤリとした顔になって真相を話した。

「はい、Mr.ドルクスとはおれのことです。全てはこの会社をおれたちの拠点にするための計画でした。ではどうやったのか説明しましょう、まずおれが最終兵器として投入したデスペラード・ダークフリーデン、あれを操縦していたのは信さんです。」

「おいおい、冗談じゃないぞ!両手両足のない信が、どうやってロボットを操縦するんだよ!」

来馬がドルクスにたずねた。

「それは特別な技術故にあまり話せませんが、信さんの思考を操縦システムにリンクさせて、信さんの思うがままに操縦できるようにしました。」

「そんなことが・・・」

刹那たちは、ドルクスの言っていることが信じられなかった。もしかして、ドルクスはこの時代の者ではないというのか・・・?

ここで刹那はあることに気づいて、ドルクスにたずねた。

「それじゃあ、信さんにデスペラード・ダークフリーデンの操縦をさせたのは・・・?」

「ああ、おれだ。」

「信さんは、納得したの?」

「ああ、このことを勧めたら喜んでやると言ってくれたよ。」

それは本当だと思った、だがどうして私たちに言ってくれなかったのか?

信さんは頼りになる男だった、それを拠点を手に入れるためにデスペラード・ダークフリーデンの自爆に巻き込むなんて・・・。

ドルクスのいつもと変わらない態度が、刹那にイライラを与える。

「どうして?どうして、このことを黙っていたの!?私たちは仲間でしよ?もし話してくれたら、私がデスペラード・ダークフリーデンを操縦してあげてたのに・・・。」

「これは私の最終兵器だ、知っているのは私だけでいい。」

「そんなのダメです!もしこれからも隠し続けるなら、あんたを追放するよ。」

刹那はドルクスにむかって叫んだ、ドルクスは冷静につぶやいた。

「おれはどうなろうといいけど、おれをここで外したらアゴノにやられるぞ。お前たちでは、アゴノには到底かなわない。次にアゴノたちに出会ったら、それがお前たちの最後となるだろう。おれにはアゴノに対抗できる力がある、それをみすみす手放してこれからの計画が失敗してもおれは知らないぞ?」

そう言われて刹那は迷った。

ドルクスの言うとおり、これからもアゴノとその下僕たちは計画を妨害しにくるに決まっている。それを防ぐには、やはりドルクスの力が欠かせない。

「わかった・・・。あなたを追放すると言ったことは撤回する。だけどこれからは何か考えがあるときは、私に報告してくれる?」

「・・・わかりました、そのようにするぜ。」

こうしてドルクスと刹那は、一度は仲直りした。しかしドルクスとは一体何者なのか、ドルクスは何のために私に協力してくれるのか?その答えは、まだ刹那にはわからなかったのだ。







そして元信の会社を新たに拠点とした刹那たちは、また爆発事件を引き起こそうと計画を練っていた。

「やっぱり、多くの人たちを一気に殺せるところでやろうよ。」

「でも、そうなるとビルとかがメインになるよね。あいつらが特定して先回りされたら、計画はどのみち失敗する。」

「じゃあ、みんながバラバラになって爆弾を爆発させようよ。」

「なるほど・・・、でもそうなると建物は難しくなりますね。」

「だったら、電車はどうだ?通勤ラッシュの時間に爆弾を爆発させれば、多くの人を殺すことができる。」

「なるほど電車か、それなら各路線ごとに分かれて、爆弾を仕掛けられる。」

「確かにいいアイデアだけど、問題は爆弾だ。いろんな路線で、複数の爆弾を爆発させるとなると、必要な爆薬の量と爆弾のサイズという問題があるんだよね。うちもあまり爆薬無いし、爆弾も小型なのが求められるからな、生産するには準備が足りないんだよ。」

珠美が言うと、ここでドルクスが言った。

「爆弾の材料なら、おれたちが用意してやる。いいツテがあるんだ」

「本当かい?それなら小型爆弾の生産をすぐに始められる。」

「ああ、抜かりなくサポートするぜ。」

「よし、爆弾の準備は珠美とドルクスに任せるとして、どの路線に爆弾を仕掛けるかを話し合いましょ。」

そして刹那たちは、各路線で爆発テロを同時に起こす計画・「トレイン・ボム」を始動したのだった。























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