第3話「怪談」始まりました

「怪談」始まりました




 バンガローは、14人が車座になって座れるほど大きく、一つのバンガローに集まった後は、これまたキャンプの定番、「怪談」が始まりました。


 私も、小学生の頃から夏休みはキャンプ三昧で、ネタは豊富にあります。


 ただ、14人もの人数になると、車座は大きくて、声が届かず、一人の話を全員で聞くというわけにはいきません。所々で別の話題が起こったりもします。


 その話題にも耳を傾けていると、音楽関係をはじめとして創作活動をするメンバーが多く集まっているせいか、「霊感」というか、アンテナが立っているタイプが多く集まって居ることがわかります。


 せっかくのキャンプで、怪談を楽しみにしているメンバーが居ることもよく分かっているので、今更中止をするような野暮なことはしませんが、雨降る深夜の怪談は、できれば避けたいです。正直リスクが大きいです。


 どうも同じ感覚の人たちが、笑い話などを交えて気持ちの盛り上がりを散らしたりしているのですが、それでも怪談で、少しずつ気が溜まっていく感じがしていました。


 怪談な言い方をすると「霊気が濃くなっていく」という感じです。もちろん外は雨が降っているので、湿度も高く、そのぶん空気も湿った密度の濃い感じがします。


 電気は点けているので部屋は明るいのですが、怪談が進むにつれ、引き寄せられて集まってきているという感じはひしひしと伝わってきます。


 14人、それ以上の人達で、バンガローの中がひしめき合っている感じです。


 たとえ霊感がなくても、心霊体験ていどがあれば、いろいろな条件の重なったこのバンガローの中では、見習い霊感師くらいの感度に増幅されているという感じです。


 霊感は、ブースターで、何十倍にも増幅されていました。


 私達が居るバンガローは、川に向かって落ちる崖に張り出して建てられています。

 入り口こそキャンプ場の広場から地面続きですが、川の方の窓から下を見れば、4・5メートル下の川原まで何もありません。

 長い足のように見える鉄骨の柱が、下へ伸びているだけです。

 ただ、河原が見えるのは昼間の話。今はただ、闇に浮かんでいるだけです。


 そんな人の立てない窓の外にまで、人の顔がちらちら見えるような気がしてきます。


 部屋の中では、ラップ音こそしませんが、時々空気のはじけるような感じがします。


 それでも怪談話は続いていますが、話は耳に入りません。もう私は怪談どころではなくなってしまいました。

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