フィギュアハンター

アーカーシャチャンネル

序章

始まりのエピソード

 いつの時代でも、流行する作品には一定の法則があると言う。超有名アイドルも一連のブースト商法がなければ――という話はネット上でも聞かれる。そんな中、超有名アイドル等とは全く無縁な世界で、ある事件が起こった。


 フィギュア転売事件、これは有名作品のフィギュアが大量にオークションサイトへ転売されていた事件である。これと同時であるが、超有名アイドルのCDが特典なしで90万枚も出品されていた。

 誰もが後者の方が問題だと指摘するユーザーも多い。しかし、摘発されたのはフィギュア転売の方だった。その理由として、芸能事務所がオークションサイトに違法性がないという資料を送ったとも言われている。

 たった数人が株券を買うかのようにCDを大量購入し、投票券か握手券のどちらかを抜いただけのCDを転売する――こちらの方が異常とみられておかしくない。


 そうした事件が仮にピックアップされても――超有名アイドルは金の力を使って事件を捏造するというのがネット上のテンプレでもあった。

【転売されていたのは握手券なしのCDじゃないのか?】

【オークションサイトのスクリーンショットさえもねつ造して、芸能事務所は何を考えているのか?】

【歴史は繰り返される】

【結局、芸能事務所は過去の事例でさえも別コンテンツのファンによる暴走と処理し、芸能事務所は無罪だと言うのか?】

 つぶやきサイトのタイムラインでも、事件を深く言及しようと言う人物はいなかった。それが恒例行事になっているからだ。しかも、超有名アイドルのCDがリリースされる度、CDランキングで1000万ダウンロードを1000万枚とねつ造している事――。

【歴史は繰り返す】

【海外も、超有名アイドル商法を規制しようと言う動きがある】

【所詮、一部投資家が株式投資と間違えているようなコンテンツ商法は――マッチポンプと海外には非難され、ネットで炎上する】

 何を語ろうとしても芸能事務所が超有名アイドル以外のコンテンツへ金が流れるのを防ぐ為、過剰なCMや実写化での失敗例を生み出し、自分達に逆らう事が――。そうした繰り返しはコンテンツ業界に暗い影を落とし、暴走ファンやアウトローの様なファン、モラルのないファン、フーリガンを生み出す土壌となって行く。



 西暦2018年、埼玉県草加市――ネット上で都市伝説やコピペテンプレの定番、それは現実で起きていたのである。トレジャーハンターのフィギュアバージョンと言える彼らを、ネット上ではフィギュアハンターと呼んだ。

【フィギュアハンター? 数年前に東京都心などで出没した話もあるが――】

【それこそあり得ない。彼らは転売屋勢力の一斉検挙に協力した後、姿を消したという話を聞く】

【悪質転売屋の様な勢力が現れた時、それはフィギュアハンターの復活を意味する。違うか?】

【チケットの転売は電子チケット化やARガジェット技術を応用した仕様で減少傾向にある。食玩は難しいが、その他の転売に関しても店舗側が努力していると聞く】

【企業努力だけではカバーできない。だからこその、彼らだ】

 ネットの掲示板でもフィギュアハンターの復活を示唆するような書き込みが目立っていた。しかし、本当に復活したのか――疑問に残る。



 西暦2018年6月1日、ある道路沿いの電機店に足を踏み入れた男性がいた。身長は169センチ、妖しいような服装ではない私服、黒髪のショートカット、体格等から女性と間違えるような人物はいないだろう。

 彼が自動ドアの前に立ち、ドアが開いた辺りで何やら上の方で声がした。強盗の様な物騒な事件ではなく、だからと言ってクレーマーの様な迷惑客の様などなり声でもない。

 声のする方が気になったので、エスカレーターを利用して2階へと上がる。階段を使う手もあったが、客が店の外へ避難しようと行動している人物もまばらに存在していた。

「お客様、困ります」

 男性店員が2人の男性に対して制止をしているような光景である。2人の男性に関してはその店には似つかわしくないような格好をしている。その外見を一言で言うのであれば、世紀末ファッションだった。つまり、彼らはフィギュアハンターと言えるだろう。

「こっちは在庫処分品を購入しようとしているだけだ。万引きとか窃盗をしようと言う訳ではない」

 世紀末な男性の言う事も一理ある。彼らはレジで会計を行い、代金を払っていたからだ。なのに、店員が制止をする理由が分からない。一般客やこの店の常連でも、この状況を見た時は目が点になっていた。それ位に目の前の光景は彼らにとっても否定したい物なのだろう。

「ですが、貴方達は確か――」

 男性店員は彼らの正体に気付いているようだが、自分はその声がする方角を無視して戦艦模型のコーナーを物色する。一時期、戦艦擬人化がブームになった事もある。それに伴って戦艦に興味を持つユーザーも増えたのだが、その一方で従来ファンにとっては心境が複雑化していた。

 新規ユーザーと昔からのユーザーが対立するのは、どのコンテンツでも一緒なのかもしれない。しかし、中にはネット炎上にまで発展するような事例もある。それらを超有名アイドルの芸能事務所やファン、アイドル投資家に利用される事で該当するコンテンツを精神的に潰すという事もあった。しかし、こうしたゴリ押しや強行手段に近いようなコンテンツ流通妨害は一部勢力だけでなく、海外からも非難される事になったと言う。

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