第10話 世の中捨てたもんじゃない
高校生の時だったか。
当時、女子の間では制服のスカートを短くし、ズルズルのルーズソックスを履くのが大流行中。
私も一応その流行の波に乗って、スカートを短くしてルーズソックスを履いていた。
そして。
とある駅のホームで、停車中の電車に乗り込もうとして。
片足がスッポリ、腿まで、電車とホームの間に落ちた。
あの瞬間というのは、何が起きたか全くわからないものなのだよ。
ただ、視界が【ガクン】と低くなった。それだけ。
始発の駅だったためか、車内にもそんなに人はいなかったけれども、なんせ花も恥じらう(え?)思春期真っ只中の女子高生。
あられもない姿で電車の入り口に詰まっている姿がものすごく恥ずかしく。
後から見たら痣になってたくらいだから、そりゃ痛みもあったんだろうけども、そんなものは二の次三の次。
慌ててどうにかこうにか脚を抜き出して、私はソソクサと違う車両に乗り込んだ。
-それから、十数年後-
私は朝の通勤電車に乗ろうとしていた。
混んでいるため、背中から車内に乗り込んで、体を押し込める方法で。
ところが、次の瞬間。
【ガクン】と視界が低くなったかと思うと、直後に両腕をサッと掴まれ、一気に体が引き上げられて、視界の高さが戻った。
・・・・要は、またもやホームと電車の隙間に片足を落としそうになったらしい。
学習しない奴だな、私。
ただ、ちょうど両脇に居た方達が、とっさに腕を掴んで引きあげて下さったおかげで、朝っぱらから片足を腿まで突っ込むという醜態をさらさずに済んだ。
状況を理解した私は、両脇の方に頭を下げ、お礼を述べた。
しかし。
この両脇の方達。
知り合いでもなんでもなかったらしい。
にしては、ものすごい連携プレーだ。息もタイミングもピッタリすぎる。
私ももし、今後そのような場面に出くわしたら、必ず引き上げてあげよう。
そう思っているのだが、なかなかそのような場面に出くわす事はなく、現在に至っている。
・・・・それよりも、自分が落ちないようにする事をまず気を付けた方がいい、ということだろうか・・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます