第22話 脳内

リョウコとサエコ、

この二人とは運命のいたずらかこのような関係になってしまった。


仕事、そしてリョウコ、サエコとの融合。


僕はとても充実をしていた。


でも、学生時代から恋愛をする度に感じていた事が明確に脳内で再生される。


それは一時的な事で永遠には続かないという事。


この先もこの熱いセックスは続かない。


この動物のような、獣のようなセックスは今だけなんだ。

いつもそうだった。


燃え盛る炎は少しずつ、少しずつ、儚く消えていく。

気づけば、失われていく。

でも失いたくない。


誰にも奪われないように、

それを一生懸命保つ為に、自分の城を固める為に必死に命を削る。


そして、それと同時に新たにもっと欲し続ける。


残酷な終わり無い円。


女性から求められている事実で自分の価値を、

男性としての遺伝子の価値を、

生きている実感を確認しても、結局、長い間は満たされない。


自分はこんなにも不具合を抱えている個体であっても

多くの女性のフィルターを通じて肯定されるのであれば

自分は優秀な個体なのでは無いか。

そう願い、心の奥底から叫んでも、やはり残るのはいつも淋しさだけ。


でも、一度は得られたことに対する慰めで自分自身を保つ。


そして、また失っていく。


どこかで折り合いをつけるしかないだろう。


自分にインプットされたこのプログラムへの僅かな抵抗かも知れないけれど。


文化や時代によっては苦しむ事さえ無いかも知れない。


しかし、ここにこれ以上もがき続けることに意味はあるのだろうか。


執着する必要はあるのだろうか。


僕は平凡な日常を手に入れて、

そっと微笑みながら生きていくことに決めた。

そう、僕はまた1人になったんだ。


いや、今は1人では無いか。


三毛猫のミーがいるから。

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