強迫性障害の僕と三毛猫のミー

水妃

第1話 囚われたボクの頭蓋


——もう、これで終わりにしよう。ここまで十分に生きて来たんだ。苦しみはこれで終わりだ——


僕は1階の階段をゆっくり上り、2階寝室に向う。


1段1段上る度に幼少期の思い出、学生時代の思い出、社会に出てからの思い出、

良い思い出も、悪い思い出も全て、勢い良く出るシャワーの様に浴びながら寝室に向かう。


寝室のドアをゆっくり開けると、不意に恐怖が僕を襲う。


しかし、自分は大きな覚悟を持ち、今という時間を迎えている。


『あとは実行するだけだ』


僕は決意しカーテンレールにロープを括り付け、首元にロープをやった。


少しだけ手が震えた。


震えたこの僕の手とも今日でお別れだ。


自分自身の傷に包帯を巻いた手、

家族に触れられた手、

友人に触れられた手、

彼女に触れた手、

自慰行為をした手、

誰かを殴った手、

自分の排泄物を処理した手、

動物に触れた手、

仕事をしてきた手、

そして、自分自身を殺めることになるであろうこの手。


この手の最期の大仕事がまさかこのようなことになるとは、

自分でも考えてもみなかった。


でも、仕方が無い。


これが、自分の人生、受け入れるしかない。


僕はひとしきり思考を終えると、思い切って飛び立つ。


ガタン……



目の前には三毛猫のミーがいた。

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