ディスコミュニケーションから生まれる幸福な物語

 「異世界転移」ではなくて「異世界から転移」。
 この作品はまさに逆転の発想で書きだされています。

 「地球人が異世界に転移してしまったせいで無人になった地球に取り残された人間と、その異世界から転移してきた異種族が協力して生き延びる」という物語。よくある「異世界転生もの」のちょうど真逆の設定ですね。
 さて、この異世界から転移してきた面々、異世界で生まれ育っている上に異種族ですから文化も体質も価値観も全く違います。

 そして、その「異文化で生まれ育った異種族」の中でもそれぞれの個性がある訳で。その種族ならではのイメージが、必ずしも当事者から見ると正しいとは限らない訳です。

 そういった「異文化ならではのギャップ」を物語のスパイスに上手に加えて、日常風景を刺激的で面白いものにしているのがこちらの作品ですね。

 詳しくはネタバレになってしまうので省きますが、エルフやドワーフ、ソーサラーに対するステレオタイプなイメージを壊しつつ、異世界人からの視点を加えることでこの世界を新鮮な目で見直すこともできる良作です。

 金属アレルギーを異世界人にわかりやすく説明するために「金属に嫌われている」と表現するなど、言葉の選び方のセンスも秀逸なのでぜひご一読を。