第52話

「ゴール!! 原田選手!! やりました!! 腹をくくったのでしょうか!!」

 竹友はテンションを上げていた。

 今はレースに集中するだけ。

「ええ。素晴らしいドリフトでした」

 斉藤は立ち上がり、

「後、一台で勝ち負けが決まります」

 斉藤はストップウオッチを見て、

「遠山選手か流谷選手か津田沼選手がゴールに近いです。相手のCチームはペンズオイル ニスモGT-Rです。山下選手と広瀬選手はまだまだです」


 ペンズオイル ニスモGT―Rと10tトラックがストレートを加速してきた。遠山と流谷は必死でブロックをしていると、10tトラックが遠山にクラッシュした。

 遠山はスピンをして、コースアウトしてしまった。


「あ、遠山選手コースアウト! 勝負は流谷選手とペンズオイル ニスモGT-Rの一騎打ちですね。後方からも続々とCチームの多種多様な車が走っています。全長12メートルのトレーラーや10tトラックの敵のブロックに広瀬選手と山下選手。津田沼選手が悪戦苦闘しています」

 竹友はマイクを持ち出して、立ち上がった。

「このままでは、確かに流谷選手が負ければそのままCチームの勝ちとなりますね」


「流谷くん……。頑張って」

 河守は熱意を秘めて自分の手を固く握っていた。

 島田と田場と原田も走って戻って来た。

「いやー、凄いレースだね」

 原田はお調子者特有に笑った。

 島田と田場は興田 道助チームに殴り込みをしようかと考えていた。

「さあ、殺しに行こう!!」

 田場は島田を連れて、マルカのマシンピストルとアンジェの持つサブマシンガンを手に手に取った。

 僕は島田と田場に「大丈夫だよ」と言った。

 河守の肩に手を置いて、それからすっきりした気持ちで九尾の狐にも微笑んだ。

 僕の心の中では日本の将来はもう決まっていた。

 そう。より良き人間性を得た国。日本だ。


 流谷は必死にペンズオイルニスモ GT―Rを追い抜こうと、10tトラックの間をかいくぐりコーナーからスローイン・ファストアウトをした。ペンズオイルニスモ GT-Rも負けずにコーナリングスピードを限界まで振り絞る。

 お互いのマシンが悲鳴に似た咆哮を発した。


 角竹は歯を食いしばり、

「興田くん。道助くん。何としても勝つんだ。人間性より未来の方が重要だ!!」

 老いた角竹は作業班にも怒鳴った。この試合で勝てば、間違いなくノウハウの援助や介護を受ける余生を受け入れなければならない。

 人と余り関われず、せいぜい乏しい感情を持て余して、日に日に衰退する体と心を自分自身で慰めなければならない。

「社長。慎ましやかな余生をお送りしてください」

 興田は頭を下げると、満川の方に向いた。満川は技術班に言った。

「相手を殺すのよ」


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