第44話 老人福祉の将来性

「みなさん。こんばんはー。ここはC区モータースポーツ・レーシング場です。レポーターは私、上から読んでも下から読んでも竹友 友竹と様々なレース場を走ったこことのある斉藤 一さんです」

 夜景を彩るスポットライトを受けた。竹友は40代の丸顔で、短髪は銀色に染めていた。隣の斉藤も髪は赤で染め上げて、40代のおじさんだ。にっこりと笑った笑顔が良く似合う。

 東京ドームほどの広さのレーシング場は、大歓声を受けていた。

「いやー。大歓声ですねー」

 斉藤は広々としたコースを見て、感嘆としていた。

「矢多辺 雷蔵氏は日本屈指のお金持ちだからいいですよねー……羨ましいですねー……」


 斉藤の声に竹友は微笑んで、


「テレビ局なども多数。このレース場に集まってきたようですね。当たり前ですが、なんたって日本の将来がかかったレースですからね。それに3年前の野球以上の盛り上がりですから」

 竹友は続けた。

「それにしても、奈々川首相のAチームの相手の興田 道助のCチームは無法レースを提示してきましたね。大丈夫でしょうか?」

「ええ、秘策どころかなんでもありですね。Aチームには文字通りA区の人々が多く見受けられますし、CチームにはC区とB区の人々が熱狂していますね。私も参加したい気分ですよ」


「皆さん。気を付けてください。命の危険を感じたら、すぐにリタイアしてください」

 応援席の晴美さんは無事だった。綺麗な横顔だがどこか険しい。

 僕は晴美さんの隣に原田といた。

「大丈夫っぜ――!! だって、藤元がいるんだぜ!!」

 島田が吠えた。

「おーっし、相手を殺してもいいんだな!!」

 田場も物騒に吠えた。

「俺……いつも身近に必ずいるから……」

 夜鶴が晴美さんの耳元に囁いた。

 僕は河守に笑顔で手を振った。

「私……頑張ります……」

 遠山は声が小さくて、誰も聞こえなかった。

「雷蔵さん。敵は強気なようで、俺も精一杯参加しているけど、また藤元さんの御厄介になりそうで……」

 原田は早くも弱気になり出した。

「私もここから応援するわ。無理しないで頑張って」

 九尾の狐が河守の肩に手を置いている。

「無法レース……雷蔵さん。死なないでね」

 河守が心配した顔を僕に向けるが、僕の顔を見てニッと笑う。

「大丈夫さ……。死んでも大丈夫だと信じよう」

 僕は微笑んだ。

 全部の車を点検しているアンジェたちの元へと向かった。


 僕のスポーツカーが並んでいる場所のアンジェたちが心配している。

「雷蔵様。異常はありませんが。どうかお命を大事にしてください」

 マルカ。

「私たちは~~。ロケットランチャーを~防げ~ばいいんですね~~」

 ヨハ。

「外部から敵の行動のパターンを推測します」

 アンジェ。

「頼んだよ」

 僕は一番気に入っているランボルギーニ・エストーケを撫でた。


 レーシング場の応援席の一角には晴美さんとアンジェたちと河守、九尾の狐と夜鶴が集まった。周囲の観客たちからは黒服数名が警護をしていた。


 そこからかなり離れた隣に、興田 守と道助。角竹、秘書の満川が広い場所にいる。今はお互い対峙していた。その周りには日本国民たちが大歓声を上げている。

「みーんな。死んじゃったら、どうするんだい?」

 道助が遠くから晴美さんの近くまで一人で歩いてきて囁いた。悪戯っこのように微笑んでいる。

「私は今、生きています。みんなもこれからも生きています」

 晴美さんはまったく動じない。

「そうですよ~。誰も死にませ~ん」

 ヨハ。

「私たちが晴美様を守ります」

 マルカ。

「雷蔵様たちは無事です」

 アンジェ。


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