第11話

 プロフィールデータとはノウハウの頭部に差し込まれたカードで、そのデータには自己に指令されている詳細なデータが入っている。

「雷蔵様~~。壊れました~~」

 僕は軽く舌打ちをした。

「しょうがない。自爆スイッチみたいなものなのかな? まあ、警察への証拠になるようなものを放っておくわけないか……」

「雷蔵様。お休みしててくださ~い。燃えていますが~、なんとか~~データを~読み取って~みます!」

 火を消して、そのカードをヨハの腕に内蔵されたデータ修復機能もある、高度なカードリーダーに挿入すると、ヨハが首を傾げた。

「雷蔵様~~。このノウハウは坂本 洋子様からの指令で動いていませんよ~~」

「え……?」

 僕はすぐさま聞き返した。

「じゃあ、誰の差し金なのかな?」

「え~と……? データによると興田 守様です」

「興田……守……? 霧島インダストリー社の部長だ! 九尾の狐の仕業じゃない! 今すぐマルカに連絡してくれ! 敵はC区だ!」


 午前の6時頃になって、急いでマルカが帰って来た。

「雷蔵様。裏の世界に詳しい男。博田 定則から聞いた話なのですが、どうやら、九尾の狐は今現在はA区にいるそうです。大金を支払いましたので、正確な情報です」

 マルカの声色は少し怪訝なところがあった。

 

 僕も同じ気持ちだ。


「A区……」

 A区は今でも農業や漁など昔ながらの生活をしている。田舎のようなところだ。日本屈指のハッカーが都会のB区にいないのは、なんだか腑に落ちない。

 いくらなんでも、最先端の情報を入手しにくいのでは?

 情報が入手できないと命に関わるのでは?

 原田はどうしてそのことを僕に一度も言わなかった?

「雷蔵様~~。もう少し入院しないと~~」

 ヨハが心配したが、僕は起き上がり着替えた。

「まずは九尾の狐に会いにA区に行こうよ。マルカ、ヨハ。敵はC区だから危険が相当にあるけど、今は情報を集めておかないと、後々困るだろう」

「雷蔵様~~。傷の手当はしっかりと~した方が~~」

 僕はヨハを押しのけて、階下へのエレベーターに向かった。マルカも心配しているが、早めにA区に向かいたい。

 

 受付と薬局に行って、念の為、止血剤と痛み止めを貰って、お金を支払い駐車場へ行くと、ボロボロのランボルギーニはマルカが修理にだしたようだ。ヨハが赤色の4座席のフェラーリを乗って来ていた。

 僕はフェラーリに乗ると、助手席にヨハ。後部座席にマルカが座った。

 フェラーリで国道30号線に向かう。

 敵も巨大な組織になって、ますますリスクが膨らんできた。

 だが、今さらゲームのやり直しは出来ない。

 前に進んで何らかの利益の可能性を得る。それが、僕の信条だ。


 途中、ガソリンスタンドの喫茶店で休憩をした。

 ネズミを思わせる髭面のマスターにコーヒーとハンバーガーを頼んだ。

「ふ~~。雷蔵様~~。お肉だけでは~よくないですよ~。それと、アンジェから連絡がきました~~。今現在、数体のノウハウと交戦中だそうで~~す」

 窓際のテーブル席で向かいのヨハが心配そうな声をだした。

「雷蔵様。C区は何を欲しがっているのでしょうか?」

 僕の隣のマルカは窓際にいる。

「うん。僕にも解らない……。それに、かなり本格的に襲ってきているね。まあ、10憶円分の何らかのデータがかかっているから当然だけれど。スリー・C・バックアップ……一体何なのかな? 」

 僕は欠伸をした。

「どうぞ」

 マスターが熱々のハンバーガーを持って来て、コーヒーをテーブルの上のカップに淹れてくれた。

「……どうも」

 僕はハンバーガーをかじる。

「雷蔵様。アンドロイドのノウハウをより人間に近づけることが、C区の全面技術提供案。スリー・C・バックアップの要なのですから……。私は思います。きっと、何か裏があるのではないのでしょうか?」

 マルカは小首を傾げて疑問を呈した。

「雷蔵様~~。アンジェが心配です~~」

 ヨハは俯いた。

「それは……そうだね」

 僕はそう言うと、コーヒーを啜った。

 窓には夕日が見えていた。

 遊歩道にはジョギングをする若者たちがいた。

 僕は考えた。敵がそこまでしてくるには大きな理由がある。

 

 それは一体?

 

 九尾の狐は関与しているのだろうか?

 そうであるならば、どこまで関与しているのだろうか?

 スリー・C・バックアップの裏は一体何なのだろうか?

 それに、あの坂本 洋子(九尾の狐)からの謎の電話は……?

 

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