第5話 はは、もう感情が死にそうです。 そうよ、感情を殺せばいいのでしょうね。 私は感情の死んだ美しいお人形となればいいのでしょう

 戦闘の音が聞こえてきます。

イケメンが私を助けにきてくれたんですね。

いったいどんなイケメンでしょうか。

柔道系イケメンでしょうか。

柔道系イケメンっていいですよね。

頼もしいです。護ってくれそうです。

柔道系男子は乱取りも毎日しているため体力もあります。

体力は殿方にとってとても重要な要素です。

私は体力のない殿方は嫌いなのです。

体力がないと、何をするにも困ります。

結婚してからも困ります。

高収入イケメンもスポーツイケメンもいいのですが、やはり一番候補は柔道系イケメンでしょう。

 「姉ちゃん、逃げるか戦って死ぬかのどちらかだけど。聞く意味ないよな」

 「柔道系イケメンでも高収入イケメンでもなく来たのは冴えない系男子でした。

まったく、第一弟分のフライトスがどうしてこうも冴えないのでしょう。

もう少しよくなるのではないかと待っても待っても相変わらず冴えないままで、諦めるべきなんでしょうが

私はまだ諦めきれません。

何故。何故私の第一弟分はこうも冴えないのですか。

私が何か悪いことをしたのでしょうか。

私は何か悪い事をした覚えがありません。

ばちが当たるような事なんてしたことあるわけがありません。

因果応報だ何かがあるとしたら、私が何をしたというのでしょう。

因果応報があるとしたら、私は今頃最強柔道イケメンに溺愛されながらもふもふスローライフを満喫しているはずなのです。

それなのに、それなのに何故私は誰にも愛されていないのでしょう。

はは、もう感情が死にそうです。

そうよ、感情を殺せばいいのでしょうね。

私は感情の死んだ美しいお人形となればいいのでしょう。

きっと逞しい柔道イケメンが私を甲斐甲斐しく世話してくれます」

 「それ心の声じゃないのか。声に出すな。どうするんだよ」

 「やりましょう」

 家来を置いて逃げるなんて選択肢、男爵令嬢にあるわけがありません。

イケメンが助けに来てくれて助かるかもしれませんし、助けにきてくれないかもしれません。

ですがそんな事はどうでもいいのです。

 「アルマ・サーティース参りましたわよ」

 悪党どもの首を切り落とし雑に切り飛ばしていきます。

はぁ、正義なき悪どもは弱いものです。

 「正義も大義名分もアルマ軍にあるわ。正義を見せつけなさい。

婚約破棄され処刑されそうになり殺されそうになり妹に婚約者を奪われババァだのもう女子大生ではないだの罵られ、

この戦い、心来なく正義遂行!」

 あら、何だか反応が悪いですね。

これだけ正義が高まり正義を遂行する時はありませんよ。

 「この戦い正義なんてねぇぜ大将」

 「はぁ、汚い顔を急に近づけないでくれるかしら。顔が汚いからって心まで汚くなる事ないじゃないの。

私達には正義があるのよ大義名分があるのよ。

しかしムタホス、第一舎弟の貴方がなんでそんなに汚い顔してるのかしら。

貴方にフツメンである事なんて期待しないけれど、その汚い顔じゃ汚メン。キモメンよ」


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