都市開発

「・・・と、今のがモデル地域のデータを元に作成された、平均値生徒@-fの日常風景です。」

「ほほえましいねぇ、数日分見たわけだが、大きく問題はないようだね。」

「地方の広い土地に大きな学校を建てるという試みは上手くいった様ですね。それでは予定通り普及させる方針で記録しておきます。」

「これがうまくいけば、全国的に生徒の一元管理ができるようになるね。教諭の煩雑な仕事も効率化されるし、地域性を理由に適切な学校に通えない子供も減るだろう。」

「学校教育は長い事わが国の課題でしたからねえ。ところで学校の設立展開についてですが、まずは普通校でデータを集め、次に上位校、最後に成績下位の学校という順で間違いないですね?」

「うむ。世の中天才が持て囃されがちだが、やはり集団の力は高い平均力がモノを言う。チームビルドだよ。もはや少数の天才が世界を動かす時代ではない。」

「存じています。既に初歩教育の段階で素養のある子供を判別し、該当家庭にドアの導入と援助を進めています。この国は世界一のチームワーク国家になりますよ。」



-----所はかわってとある町----

「私が若いころは想像もつかなかったよ。」

記者の前に座っているのは初老の男性。身なりは良く堂々としているが、誰かに着せられているような印象がある。

「ええ、ドアが発明されて以降、ウェストシティは急速に発展していましたね」

「最初はただ、イーストやミドルシティみたいな場所が西側にもあればいいのにと思ってただけなんだがねぇ。」

「つまりこうなる事を知っていたわけではなかったんですね?成功の秘訣なんてものはあるのでしょうか。」

「無い。完全に運だ。ちょっと地元を活気づけようとした、それだけだよ。ドアを繋ぐのに良いスペースがあって、既にある程度発展していて、予算がかからない。それで、最初にこの町で実験が始まった。それだけだよ。」

「(うーん、困ったな。もっと華やかで派手な話が聞きたかったんだけどなあ・・・これだから田舎者は・・・)」



-----イーストシティ----

「このあたりはすっかり寂れたよ。伝統あるデンシャ文化だなんだと言って観光客を集めようとしてるが、まずドアを置く場所がない。同じイースト近郊ならまだしも、わざわざウェストからデンシャで来ようとする人なんかいないよ」

「あ、また店が潰れてら。そこらじゅうドアビルだらけになっちまったなあ。夢の観光地だ、って先がこんな風景じゃなあ」

「でもディストピアっぽくて興奮するよな」

「わかる」

「あーやだやだ。結局は金持ちが価値を感じるかどうかなんだよな。回線が混むし転送時間も長いからって、料金もずっと高くて家庭用なんかとんでもない。だなんてさ。」

「でもディストピアっぽくて興奮するよな」

「わかる。それにこうやって友人と歩ける夜道があるんだ。」

「ま、なんだかんだで俺達はイーストの人間なんだなって思うねえ。」








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