Ⅴ EXTRA
相談ジーニアス
誕生日パーティーの直後、皆が寝静まってから、カーバはマイマイを自室に呼んだ。
「君は優秀な諜報員だったね。何かIRISについての情報も掴んでいたりするのかい?」
カーバが単刀直入に切り出すと、マイマイはニコリと笑って言った。
「IRISについて、何が知りたいですか?」
「そうだね……本拠地とかトップに近い幹部の名前とか」
「それはわかりません」
「そうか……人民解放軍の諜報力をもってしてもわからないとなると相当だな」
「彼らは資金がない軍事組織と見られていますが、それにしては武器が豊富すぎると思いませんか」
「確かにそうだな。最近は戦車まで運用している。運用ノウハウは一体どこから得てるんだろうな」
「噂では旧ソ連の元兵士が指導をしているらしいですが……」
「詳しくはわからない、か……」
「はい。あくまで仮説です」
「そういえば噂で聞いた話なんだが、中国共産党が何やらIRISに支援をしているという噂があるらしいな」
「それは恐らく違うと思います。確かにIRISは宗教的な結社ではありませんが、IRISは『Infinity Revolution Inside Sahara』の略と言われているように無限革命論を掲げていますからね」
「中国とはスタンスが違う……か。根拠としては多少無理があるような」
「まあそれはそれとして、もうそろそろ明日の朝食の下ごしらえをしなければいけないので……」
「わかった、続きは来週にしよう。ところで明日の朝は?」
「カレーパンです」
「そうか。下ごしらえはどんな感じになるんだ?」
「生地でカレーを包んでおかないといけませんね」
「それは大変だな」
「ああ、所長は手伝わなくていいですよ」
立ち上がろうとしたカーバをマイマイが止める。
「なぜだ……?」
「所長はこの前餃子の皮を破りましたからね」
「……そうだったな」
「カレーパンは包み方が大事なので。それではすみませんが、おやすみなさい」
「ありがとう。おやすみ」
マイマイはキッチンへ向かい、冷蔵庫で寝かせておいたドーナツ生地で多めの小麦粉を混ぜて作ったカレーを包みはじめた。
「カレーパンはどうして揚げるか知ってますか?」
マイマイが振り返ると、多野が立っていた。
「多野くんか。たしかカツレツを再現しようとしたんだっけ?」
「なんで知ってるんですか……」
「私がカレーパンを自作できるのは以前日本のパン屋に勤めながら仕事をしていたからなんだよ」
「まさかカトレア……?」
「正解。警視庁には内緒だよ」
「さすが元スパイ……」
「さて、そろそろ寝ないと明日起きられないぞ」
「はいはい」
多野が去ったあと、マイマイはカレーパンの下ごしらえを終え、自室に戻った。
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