第20話


「中学の時に、好きだったやつに告ったら見事に振られたんだけど、何事もなかったかのようにされて、全部ウソみたいにされて、全部がいつも通りにされてなんか嫌だったんだよ。緊張とかそーいうのいろいろ抱えてやっと言ったのに、それを簡単に受け流された気がして。でも、確かに俺のやり方も間違いだったのかもしれない」



矢代の耳が赤い。



そうだよね、そういうこと話すタイプじゃないもんね。



なのになんで、私に一生懸命そんな話してるのかって考えたら、ちょっと嫌だった。



矢代は私を振るつもりで、ちゃんと誠実に振るつもりで、そして仲が良かったからこそ誰に対してよりも優しくするつもりだ。



それがわかったから、次を促すことになる返事をしたくなかった。



がっかりして唾を飲み込んで、それでもなんでもないってフリをするしかなかった。



そうしたくなかったけど、私は矢代が好きだから、早く楽にしてあげたくて頷く。



「まさかのモテ状態だったしね」


「……気まずいじゃん。マジでまさかだよ。2人ともはるの友達だし」


はあ、とため息を吐いた矢代は、そのため息と一緒に早口で言った。


「だけど、だけどはるには同じようにできなかった」


「——っ!」



空気じゃなくて間違ったものを吸い込んでしまったかのように肺が痛くなった。



矢代に目が釘付けになって、目が合ったことで身震いした。



「はると話せないって、俺がやなんだよ」



苦しそうにそう吐き出した矢代から、何もかもを忘れて目が離せなくなった。



もうこれ以上は大丈夫だと思っていたのに、私はまた矢代にときめいてしまっていた。






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