drug ROCK Someday

みなみくん

第1話 前編

15で覚えたドラッグとアルコール


質(しつ)の悪い地元じゃ3人に1人くらいはそんな奴だった


夜遊びが習慣でクラブにライブハウスに出入りしてれば、必然となる偶然、当然の因果であった




どいつもこいつも何かが欠けていて、生き急ぐような明日も見えないような奴ばかり


あたしだけじゃない





円形の痣が目立つ、不自然に締めた様な跡の首

左手の包帯


名前しか知らないような、今日出会って寝たその男は、知らない女の名前を苦しそうに呟いて眠っている


少し強く抱きしめ撫でると涙を流していた


クラブで、あぶくの混ぜ物だらけの安いパケでも喰ったような悪絡みをして来た3人組を1人で追い払ってくれた


まあ、こいつ自身もハッパをブレンドした煙草吸ってたけど


こいつもやりたかっただけなんだろうか


単にアガってただけなんだろうか


地味に正義感だったとか



なんにしても、本質は強くなんてないんだろう


タフなアウトロー


質の悪い連中は、普通を生きてる周りの奴らからはそんな風に映ってるのかもしれない


でも、必ずしもそうじゃない


表面上だけなんだ


どっちかと言えば、弱いから壊れるんだよ


それを悟られまいとする


欠損した普通との境界線の境目の大事ななにかを、狂気で隠すかのように、補うかのように、探すかのように




隠すことも補うことも探すことも出来なくなったやつは、大体どっかから飛び降りて消えていった


逮捕されたり事件に巻き込まれて消えてく奴もざらだった


クラブやライブハウスで見知って、いつの間にか消えてく


その繰り返し


質の悪いこの街じゃ珍しくない


ロックとアルコールとドラッグで過ごす日々


そのサイクルで廻る一部の人間





ヒトの分かりやすい脳の本質


報酬系に支配されるヒトの脳は、欲求行動を、悪しき物質やジャングだったり害があるものでエクスタシーを獲得し壊れた前頭前野はそれを絶え間なく求める



副交感神経は常に優位でいたほうがいいでしょ、その延長線みたいなもんじゃないってちょっと医学的に言えば、言い訳になるのかな


ハンバーガーとコーラを病気になるまで食う奴やカロリーオーバーしたラーメンを永遠に食う奴ってごまんといるでしょ


それと同じようなもんだと思う


まあ形は違えど人は満足するためなら体に悪くても平気で摂取する、そんな生き物


そんな事を考えながら

ガラスパイプの先をライターで炙りながら、白む煙を吸い込む



16になり、街を出てからも変わらなかった


流れ流れて新宿に辿り着いた


あたしは何処で終わるのだろう


あたしは何処で止まるのだろう


分からないまま月日だけ流れていった


それだけが生きてる証明だった


一緒に死のう?


やっぱり怖い


もっとぶっ飛ぼう?


やっぱり怖い


嘘つきだらけでメッキが落ちる奴が増えていった


中途半端なパーティードラッグ遊びでドロップアウトごっこするやつばかり




振り切る覚悟はさらさらない


まあ、9割型はそんなものなのかな




風の噂で耳にした

地元で良く観に行ってたバンドのボーカルがオーバードーズでライブ中に死んだ


きっと幸せだったろう


良い作品を造る為に、アセチルコリンをこよなく愛し、使用効率を高め抽象的な思考を限界まで高めて一心不乱に曲を描き続け、見えないゴールに全力で、手段問わず走り抜けての結果なのだから


唯一残念なのはあの壊れた、狂った、一体感を覚えるステージを見れないことだった


新しいボーカルは顔がいいだけのモブみたいな奴だった


詩も歌も嘘とメッキだらけ


一度近くに遠征してきてたから観にいったが、もう二度と行かないと思った



平日は仕事(キャバクラ)でアルコールを飲み接客、休みはクラブやライブハウスでアルコールにドラッグにロック


この入れ物はいつまでもつのだろうか


なんて、自分の体なのに当事者に思えない



仕事でも面白い客は居ないし、クラブやライブハウスでも段々とそういう奴は見る機会が減っていった


大人になってくとそういうものなのか、まともになってくのか、死んでるのか、捕まってるのか


あたしはなんて中途半端なんだろう


でもきっとこの新宿って街にはそんなやつ沢山いるだろう




そうして気づけば19になった









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