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時間は少し巻き戻って『喫煙所』。


彼らはお酒でワイワイとはしゃいでいたが、一応は国のトップ。外交で来たからにはそれなりの成果という物を出さなければならない。


「では、我々には最大限のできる事をしましょう。」


国に帰りなんの成果もなく、何も対策をしないとなったら国民の不満が爆発する事だろう。


そこで彼らは考えた。異世界に行った彼らの支援とその残された家族への対応について。


そして、二日とたたないうちに創ったのが転移者を支援する機関、世界転移者支援機関WTSOである。


例えば、異世界からの配信情報をまとめて各種メディアに発表したり、転移者に危険が及ぶ情報があれば逐次伝えたりというのが主な内容だった。


だが、今は違う。



「生存転移者の危険者順のリストまとめました!」

「世界有数の財閥への返信はまだか!?」

「ネットニュースへの規制線が守りきれません!」

「おい、CIAとFBIからの返信はまだか?!」

「転移者を殺した人たちのピックアップはまだか!?」

「中国人どうしの殺し合いが発生!どちらも重傷です!」

「転移者への警告の通達が遅れている!急げ!」

「魔術は一体…?」

「各国へ魔術と魔術師とは何か聞いてこい!」

「ロシアからの返信がありました!“不明”とのことです!」



元々、彼らはそこまで忙しくもない緊急性のない仕事だと聞かされていたはずだった。

なので、とても緩い気分で仕事をしていた。


((((こんなの、聞いてない!))))


彼らの戦いはまだ始まったばかりである。



..

.




そして時は戻って、迷宮都市ゼリウスの石藍亭では。


「スコーンうま。」

「小麦粉に似た何かがこの世界にあってよかったわ。」


お茶会をしていた!


____________________

こいつらマジ?

朗報:まさかの同郷そして魔術があると判明

悲報:まさかの女将さんはやばい奴だと判明

うーん、このぐだぐだ感

イギリス人かな?

逃げてください!

どっちにしろどっちかが地球に戻ってくるという定期

厄災が来る事は確定かい…

あ、中国人が相打ちで死んだで

んー世紀末

やってんな

ローゼンクロイツってなに?

有名人?

偉人?

歴史上の人?

GGREKS

wiki使え定期

____________________


「紅茶ってどうやって?」

「複数の薬草を潰して天日干ししたのよ。」

めっちゃ美味しい。さすがイギリス人って感じだ。


「それで、お話とは?」

かといって時間はあまり無い。


ならば、早く物事を終わらせるのが合理的だ。


「単刀直入に言うと、私の娘のローゼに地球の姿を見せてあげたいの。」

…あの子に?

いや、確かに親が子にたくさん学ばせてあげたい、旅をさせてあげたいという理由はわかるんだけど…


「なんで?」

恐らく、違う気がした。


「あの子は本来、地球で生まれるはずだった子。なのに私の不手際でこちらの世界に来てしまった。それが理由よ。」


彼女の口元から紅茶のいい香りがする。


(…ん?どういう事?)


「な、んでローズは地球で生まれるはずだったって言えるの?」

そこが、どうしてもわからない。

あの子は別に性格はアレだけど普通のどこにでもいるかわいい女の子だ。


「あんたは、一体何をやらかしたんだ?」


異世界に行くくらいの不手際。

見当もつかなかった。


だからこそ、彼女の口から出て来るであろう言葉を身構えていた。


「…、私が団に入っている時に研究している事が原因だった。」


「その私の研究内容とは、『人間で在り続ける事』。」


…意味わからん。


それがどう繋がるかわからないが何も言わずに聞くことにした。


「そもそも、薔薇十字ローゼンクロイツとは人々の傷を癒したり、助けたりするのが目的の団だったのよ。でも、現実は残酷だった。」


「助けても暴言を吐かれ、助けても畏怖の目で見られ、助けても彼らは助からない。」


「そこで、私が考えたのが『死後も人間で在り続けるという事』だった。」


彼女は息を、吐く。


「つまり、輪廻転生の道筋を自分で作りあげる。それが私の研究だったのよ。」


彼女の罪は、僕の魂じゃ測れないほどに重かった。

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