14

久しぶりの湯船を堪能した後、冒険者ギルドの討伐依頼のため見張りであったゴブリン達の耳を削ぎ落として麻袋に入れてから帰路についた。


帰る時にはあの例の門番に絡まれる事も無く村に入る事が出来た。


「ゴブリンの耳持って来ました!」

古びた扉を勢いよく開け中に声を響かせる。


どうやら爺さんは寝ていたようでそれを証拠に涎がついている。美女の夢に垂涎でも垂らしていた所を無理矢理大きな声で起こしたせいか、今は貧乏ゆすりをして不満そうな顔をしている。

「なんじゃ!わしは忙しいんじゃ!」

そう言いながらも耳の入った麻袋を取り上げるように奪い取る。癇癪を起こしていると力が上がるのは異世界も同じらしい。

「ほれ、報酬じゃ。受け取れ。」

銅貨数枚をこちらに投げて渡して来た。

銅貨を拾おうとすると足で邪魔をしてくる。目と口は正しく屑と言える顔だった。

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ウゼェ

命を冒涜した罰です。

いや、普通にウゼェわ。

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普通に殴りたいと思った。

ん?あれ?銅貨が一枚多い。どうやらお金の計算を間違えたようだ。

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『報酬が銅貨1枚多い。』

とっとけ

知らんぷりしてろ

金を投げ返してやったら?

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金を投げ返す…アリかもしれない。

後ろに向いた爺さんに向かって地面からから拾った銅貨を握って投手の構えをとる。

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おいw

w w w w

やっちまいな!

さて!無常選手!結果はいかに?!

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「あ、これ計算ミスの銅貨でぇーーーすッ!!!」

ゴオぉォォ!!という轟音と共に爺さんの頭に銅貨が炸裂する。

それと同時に僕の頭の中であの機械のような声も炸裂した。

『レベルが1上がりました。』

『スキル、投擲を獲得しました。』



……ん?

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ん?

あ、やば

あー

つまり、あれだ、あれ。

やりやがった!

ナイス!

いい球やったな

めっちゃ速くなかった?

レベルUPの影響だろうな。

っていうか元々の目標として安全で快適な生活を送ることが目標じゃなかったっけ?

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「…おーい。爺さん生きてる?」

試しに本棚の本『王国律令』で突いてみるが反応はない。

「もしもーし?大丈夫?」

…反応がない。どうやら屍のようだ。

「錬成」

手を当てて体内の様子を視る。透き通る世界。それは僕の身体すら水の波紋の一部に思えた。

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現実逃避しても無駄やぞ

死んでるってまじ?

さりげなくコイツ殺しやがったぞ

反応うっす

コイツ日本人ってまじ?

あの殺人鬼と変わんねぇだろ

そしてコイツが一番いま見られている配信者

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恐らく人類史の中でここまでの多人数における衆人環視の中での殺人は初めてだろう。いや、あの殺人鬼を殺した時にもしてたっけ。

ちなみにこの国における刑罰を確認するために本を開けてみると殺人は位によって変わってくるらしい。

奴隷は三ヶ月、平民は1年、貴族と王族は無期懲役、もしくは死刑らしい。

ちなみにお金を計算以上にもらうことは横領罪になるとされているが、間違いだったら無罪とされるという。

「とにかく、どうにかしないと」

都合のいいことに此処にはほとんど人は来ない。

(ゴブリンを街の中におびき寄せてひと暴れする?いや、関係のない人間にまで迷惑が行くのは避けたい。)

「錬成」

とりあえず、爺さんの身体を錬成でブロックにし、持ち運べるように取手をつける。生暖かいのが手を伝って感じられる。

だが、これも次第に温もりが失われていくのだろう。

(こんな事で捕まるなんて真っ平ごめんだな!)

仕方がないが二日目でこの村を出るしか無いらしい。

だが、このタイミングで出たら怪しまれるに違いない。


何か方法はないのか?

「ステータス」


無常 仮寝 (むじょう かりね)


レベル14

HP240/240

MP320/340


魔法∶錬金魔法


スキル

鑑定スキルレベル1

アイテムボックス

気配察知レベル2

気配遮断レベル2

創造レベル2

付与術レベル2

身体能力強化レベル3

能力

罠設置レベル1

対殺人鬼特攻レベル1

幸運レベル1

投擲レベル1new!

SP13


SPってことはスキル選択をすることができるということか?

SPを押してみるとたくさんのスキルが出てきたが、あの時のスキル数よりも少ない気がする。ん?なんか書いてある。

[スキルと魔法はあなたの可能性であり、肉体に刻まれ、魂に刻まれます。]

…つまり自分のことに関わることしか選べないということだろうか?

まぁいい。とりあえずスキルを見ていくとしよう…


んーこれもいいな。あ、あれいい!

なんかこれロマンありそう!SP足りるだろうか?

そんな事を考える姿を見ていた視聴者達は、皆こう思った。


誰かあの馬鹿を止めろ。そして日本から出て行ってくれてありがとう、と。



残念なことに爺さんを悼む声はなかったと言う。











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