性欲過剰人妻ミウラの決して存在してはいけない食卓

和田島イサキ

Dish.1 〝飲んでも大丈夫な洗剤〟

 七年ぶりに会った高校時代の親友、身長一八〇センチ超えの超大型巨乳セレブ人妻であるところのミウラが、私に〝飲んでも大丈夫な洗剤〟を紹介してくるところからこの物語は始まる。


 そして終わる。洗剤入りのグラスを一気に煽って、でも途中で、


「——ホガッ?! ォボッ、ゴボアァァッ!」


 と、目鼻口からアクアブルーの液体を噴き出す、その辺はやっぱりあの頃とは違う。二十五歳。お互いもう若くない、なんて言ったらさすがに大袈裟だけれど、でも十代の頃と同じようにはいかないっていうか正直「ごめん、誰?」以外の感想がなかった。


 適当に予約した個室居酒屋、差し向かいに座る旧友と思しき女の、そのすべてに私は見覚えがない。誰お前。見た目がすっかり垢抜けたのはともかく、性格まで明るく快活になっているのはどういうことだ。

 昔と変わらないのはせいぜいその上背と胸囲、あと、


「待っ、ちが、これは変なとこ入ウオェェェッ、ゲボッ」


 と鼻から噴き出る虹色のあぶく——すなわち、〝人が絶対食べちゃいけないはずのものをバリバリ食べる〟というその悪癖だけだ。さっきあの頃と違うと言ったのはつまり、「昔のミウラなら洗剤くらい余裕だったはずだが?」という意味に他ならない。


 そりまち弥生やよい。旧姓、水卜ミウラ

 彼女は昔からとてつもない女で、だって出会いの瞬間からもうセミとか食ってた。

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