魔法

「ほら、ここ。秘密の場所なんだ」


アルシアお兄ちゃんについていくと、ちょっとした小型の森的な、ぽつんと生えている木達があった。


「な、なんか変でしょ?」


「うん・・・。もりのなかに、いるころ、とかわんない・・・」


そのちょっとした木達の集まりの中に入ると、森の中に居る頃と全く変わらない景色が見えた。


「ここ、いいでしょ?俺、ここが大好き。唯一感じられる森、って感じで」


「ゆいいつ・・・」


かっこいい言い方をするなあ。


こういうところで育ちがいいんだとわかる。


「ちづき!ほら、俺の人形!見てみて!!」


そう言われてアルシアお兄ちゃんの手元を見る。いつの間に出したのかその手には三つのぬいぐるみがあった。


「にんぎょう・・・?」


「うん。俺の家系はこういう、操る系の魔法が得意らしいんだ。俺の場合は人形!可愛いでしょ?」


「うん!!」


確かにぬいぐるみは凄く可愛い。女の子と男の子二人。女の子はふわふわのワンピース、男の子二人はきちんとした武装をしている。


「ね、ほら。見ててよ」


ふわっとぬいぐるみが浮き上がって、ふわふわ漂い始めた。


「俺はまだこれぐらいしか動かせないんだけど・・・」


と言いながら手をワキワキと動かす。アルシアお兄ちゃんが変な人になっている。


でも、そんなことも言えないから、ただ黙ってその行動を見つめる。


「お父様はもっとスゴいんだよ!人形から魔法が出るし、人形を使って戦闘まで出来るんだ!かっこいいんだよ!」


何だか人形から魔法が出るのは想像できないけれど、ノルドさんがとってもスゴいことだけは分かった。


「すごいんだねえ、ノルドさんって」


「そりゃあね!なんたって、皇帝のお手付きなんだから!」


「・・・?おてつきのいみわかってる?」


「うん!気に入られてるってことでしょ?」


「・・・まあ、うん?そうだけど・・・」


皇帝様のお手付きって・・・。まあ、それだけスゴいんだと思おう。


いつの間にかふわふわ浮いていたぬいぐるみは、アルシアお兄ちゃんの腕の中に戻っていた。


そして、ぬいぐるみの手には綺麗な花が一輪づつ握られている。


その内の一つを取って、はい、と渡された。


「綺麗でしょ?」


「うん!」


「良かった!」


僕とアルシアお兄ちゃんがニコニコと笑い合っていると、遠くの方で声が聞こえた。


「坊ちゃま~!!ちづき様~!!」


男の人の声だ。きっと、年老いた執事的な人だろう。僕も何回かあったことがある。物腰が柔らかくていい人だ。


「あ、帰らなくちゃ。早く戻ろう?」


「わかった!」


手をつないで二人で駆け出す。アルシアお兄ちゃんは僕の早さに合わせて、遅く走ってくれてる。


何だか懐かしい。前を行くアルシアお兄ちゃんと、誰かの影が重なって・・・


『「ちづき!行こう!」』


アルシアお兄ちゃんの声と知らない声が混じって聞こえた。


不思議に思って首を傾げるけれど、すぐに影は消えてアルシアお兄ちゃんだけになった。


「どうかした?」


「ううん。何でもない」


アルシアお兄ちゃんは何だか不思議そうな顔をしたけれど、すぐに前を向いて走り出した。


僕もついて行く。この暖かい人達がいっぱい居る場所へ帰るために。




ーーーーーーーーーー

作者から

不定期更新始まります。許して下さい


すみません!


一ヶ月とか普通に空くので・・・気長に待ってくれたらなあ、と思います。これからも楽しんでいってください!

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