白髪の子

アーノルド視点


戻るところでヨリックと合流した。


「はあ、連れて行くのにも一苦労です。うるさすぎるので強制的に口枷をつけて連れていきました。めんどくさいです。」


久しぶりのヨリックの本音だ。それほど面倒くさかったのだろう。


「エッカルトは大丈夫だったか?」


「枕を濡らして泣いてますよ。こういうときはウザくなるんです。ずっと俺にひっついて来ますから。今さっきも引っ剥がしてしてきました」


「ははは・・・。お疲れ様?」


「軽く言わないでください。苦労してるんですよ」


私呼びもしていない。こんなに疲れた顔を見るのは久しぶりだ。


「いつもすまん。で、白髪の子は?」


「ああ、洗うためにお風呂場にいるようですが、大浴場の方ですかね?狼も居ますし」


お風呂場と言っても、個室、大浴場に色々ある。本当にムダに多い。


「そうか。行くぞ」


「追い出されませんか?」


「流石にソンアリーが一緒に入るなんてことはないだろう」


前にソンアリーが入っているのを知らなくて、入ってしまい、ヨリックだけひどい目に会った。あのときのソンアリーには、すまないことをした。


「いえ。その心配はしてませんよ。貴方が行く必要はないのでは?」


「いや、アンルシアが大浴場の方に行ったらしいからな。一緒に見れる。丁度いいだろう」


「はあ・・・・」


ヨリックは呆れた顔をして頷いた。このバカが。っとでも考えてるんだろう。


仕方ない。俺は自分で確認しなきゃいけない主義なんだ。


大浴場へ向かい、メイドに引き止められたが、構わずに中に入る。


すると、お風呂の中に動物しかいない。という、不思議な光景が見えた。


白い狼は起きたようで、風呂の縁に顔を乗せてリラックスしている。


猫又と白狐は猫又が外に出るのを止めるように、白狐が行く道を塞いでいる。今さっき見たときより少し小さいサイズになっている。なのに、彼らが激しく動くたびに、ここまで水しぶきが飛んでくる。


それなりに遠い場所にいるのに。


鳳凰とホーノとフーノはソユアとアンルシアにあらわれていて、泡でもこもこだ。どんだけ石鹸を使ったんだ。


白髪の子はここからじゃ見えない場所にいるようだ。


もう少しラフな格好で来ればよかった。びしょ濡れになってから後悔するにはもう遅い。諦めて、ソンアリーが手招きしてくれているところまで行く。


ソンアリーの横には白髪の子が眠っており、ズボンを履いて上の服だけ脱いだ状態だ。


「あなた、この子ちづきって言うみたい。フーノとホーノを助けてくれたのも彼らしいわ」


「彼ってことは男の子だったんだな?」


「ええ。でも、ここを見て」


と、ソンアリーはちづきと言う子供の胸元を指した。


その胸には花・・・か?小さな波頭が立っているような感じだ。わからなくて困っていると、ヨリックが助け船を出してくれた。


「それは、タツナミソウ・・・でしょうか?よく奴隷の胸に押されています」


「奴隷・・・か・・・」


「・・・そうね、足にもいっぱい青痣があったわ。」


ヨリックはいつだってサラッと酷いことを言う。奴隷は何回だって見たことがある。俺の婚約者候補の中にも奴隷が居た。相当ひどい扱いを受けていたらしく、話もままらなかった。


この子と話すことはできるのだろうか・・・?


「ふう、よし。養子に迎えましょう!」


「「は?」」


俺はヨリックと一緒に目を丸くした。いや、何を言ったんだ?


「よ・う・し、よ。意味わかるでしょう?」


「い、いや、本人の同意が必要なんじゃないのか?」


「あら、私の許可なしに結婚の準備を進めた脳筋さんはどこに行ったのかしら?」


確かに、若い頃に、結婚の許可を取らずに一人舞い上がって準備を指示したのだが・・・あれは凄い黒歴史だ。


「うぐっ。あ、あの頃は少年だったんだ!」


「そう?私にとっては今でも貴方は少年よ。」


「ソンアリー・・・」


なんて優しい妻なんだ。


「いちゃつかないでもらえます?私の立場を考えてください」


ヨリックに思いっきり睨まれたから、甘い空気はすぐに引っ込んでしまった。久しぶりにいちゃつきたかったのに・・・。


「そんなにしょげた顔をしないでください。悪いことをした気分になります。夜に時間を取っていいですから」


呆れを通り越して少しキレ気味のヨリックに言われる。俺は嬉しくてバッとソンアリーの方を見た。


「お手柔らかに」


はにかみながらソンアリーは言った。可愛すぎる!!可愛すぎないか!?俺の嫁!!


「惚気けないでください。早く仕事をしますよ。」


と、ヨリックに引きずられて大浴場を出る。メイドからタオルを貰って、ヨリックに拭いてもらう。この手に、ワシワシとされる感覚が俺は少し好きだ。


前にそれを言ったら思いっきり、タオルを使って叩かれたからもう言わない。タオルの威力半端ない。

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