愛は時を超えるのか? 〜白馬の王子様は現代の騎士道です〜

安達尤美

紅い瞳のお姫様

プロローグ


 空を見上げても、そこに私の知る青空はなかった。


 あるのは煙と炎に包まれたオレンジの空。この空が、再び青空に戻ることはあるのだろうか。


 私は友人の亡骸をそっと抱き上げる。隕石によって桜丘市は滅びたのに、ここまで綺麗に遺体が残ってるのは奇跡だった。


 私のせいだ……


 心を掻きむしって千切ってしまいたかった。この結果は私の存在が招いた結末、私の罪そのもの。


 どうして、私は生きているんだろう?


 これは私を殺そうとして起こったことなのに、肝心の私が生きて、無関係な人たちが死んでるのは受け入れられなかった。


「……さん」


 後ろから声をかけられる。私を慕い、私にならんと修練する未来あった少女。


「……さん、生きてたんだ」


 私は彼女の生存に安堵する。私にとって、彼女は大切な弟子なのだ。


「私には然気がありますので……でも、これは……」


「ええ……」


 改めて置かれた状況に絶望する。あるのは瓦礫と死体の山だけで、人間が生活できるインフラなど残っていなかったからだ。


 これから、どうすればいいんだろう?


 私は助けを求めるように未来を視る。生きるにしても死ぬにしても、何か未来が見え──



 何も……見えない?



 あらゆる可能性を検索しても、未来を見ることができなかった。まるである地点から、未来そのものが存在しないかのよう。


 一体、どうして?


 私は一秒先の未来から順を追って見ていく。何か、世界が終わるきっかけがあるはずだ。


 ダメだ。分からない。


 しかしどれだけ順を追って見ても、まったく原因が分からなかった。いきなり、私たちを含めて世界がプツリと途絶えてしまっている。


 けど、一つだけ確かなことがあった。それはこのままだと、私たちは消えてしまうということだ。


「どうですか? 未来見えます?」


 彼女は、私が未来を見ているのに気づいていたようだ。


「それが……ある日突然、世界がなくなるみたいなの。私の目を持ってしても、それ以外のことは分からない」


「世界がなくなる⁉ ど、どういうことですか⁉」


「分からない。けど、このままボケっとしてたら、私たちは存在もろとも消えてしまうわ」


「そ、そんな! 一体どうしたら!」



「……んなもん、過去に行くしかないだろ」



 私たちは声を聞いて振り返る。


「……! アナタも生きてたのね!」


 私は二人目の生存者に心から喜ぶ。流石は私の忠臣だ。


「……さん! そうは言いますけど、方法はあるんですか⁉」


「ない。けど……様ならできるはずだ。アイツら言ってたぜ、アンタは魔族にとっての神だって」


「過去に……確かに、私ならできるかもしれない」


 私の中に希望が見える。私が神に類するというのなら、できたって不思議ではないはずだ。


 現に、私はミクロな全知全能を有している。


「それにそうすりゃあ、……様の想い人が死なない未来を掴めるかもしれない」


「……さんもですね」


 私の右腕と懐刀は乗り気のようだ。私としても否定する理由はない。


「……そうね、行きましょう! 私たちの未来を変えるために!」


 こうして私たちは、過去に旅立つことを決意する。


 過去に行くのはそこまで難しくなかった。私たちの存在を四次元に置き、そこからマイナス方面に進めばよかったからだ。


 ただ調整ミスって生まれる前に行ってしまったし、そこで色々と持ち上げられることになったのだけれど。

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