デレ度4

第28話  嫉妬してくれていたのが少し嬉しい

「おはよー 春くん!」

真弥まやさん、おはよう」


 いつものように楽しそうな様子の天然おっぱい女子が話しかけてきた。

 彼女の名前は木村真弥きむらまや。女子で二番目に仲のいいクラスメイトだ。

 もちろん一番は、絶賛同棲中の庶民的なお嬢様である。


「綾瀬くん。前よりカッコよくなった!?」

「それ自分で答えられない質問なんだけど……」


 そんなお世辞に苦笑いしていると、教室に実川さんが入ってきた。

 低身長ながらもスラリした健康的な脚と整った顔立ち。まさに男の理想。

 普段はクールだけど家ではむちゃくちゃ可愛い女の子だということはこの学校で俺しか知らない秘密。

 真弥さんが元気よく挨拶をして実川さんに抱きつくと実川さんもどこか嬉しそうな表情になる。実川さんは真弥さんに対しては心を開いているのだと思った。


「ねっ! クリスマスの日、春くん時間ある?」

「えっ……。昼間なら空いてると思うけど」


 その日は確か実川さんと夜に、イルミネーションを二人で見に行く約束がある。

 でもここでそのことを話してしまうと流石の天然おっぱい真弥さんでも怪しむに違いない。


「えぇー、昼間かぁー。春くんと一日クリスマスデートしたかったのになぁー」

「ごめん。その日はちょっと……」

「そっかぁー。ならイブは? 空いてる?」


 クリスマスイブの日は確か空いていた気がする。実川さんとの約束は次の日だし多分大丈夫だろう。


「うん。イブなら暇だと思う」

「やったぁー! それじゃあ一日デートだねー」

「っ!、デート!?」


 実川さんは少し驚いて眉をしかめる。

 デートという言葉に反応していたように見えたのだが……


「どうしたの紗希?」

「いや、なんでもない……」

「じゃあ春くん! 詳細は後でRINEに送るから見といてー」


 会話が終わって実川さんの方をちらっと見ると、俺に何か言いたそうな表情でほっペを少し膨らましている。

 これは帰ってお叱りの予感。

 まぁ、叱られるのも嫌いじゃないんだけど……(変態発言)





           ◆




 ――家に帰って早々俺はベットの上で、実川さんからへッドシザースを食らっていた。

 俺の顔が実川さんの白く細い足で挟まれている。


「実川さん、俺はプロレス技をキメられてるの!? 苦しい……」

「わかんないかー。じゃあ、五分追加ね」


 そう言いながらも実川さんは、少しニタっと笑ってから離してくれた。

 実を言うとそこまで苦しくはなかったのだが、締めがどんどんキツくなっていったので危険を感じてギブした。

 このくらいのお仕置きなら童貞で非リアのラノベ主人公気取り男子は『毎日してください!』と言って喜ぶだろう。


「綾瀬くん。……真弥とはどういう関係なの?」

「え、ただの友達だけど」

「でもデートって言ってたよね」


 言葉選びの悪い真弥さんのせいで部屋の雰囲気は最悪。今からでも窓から逃げ出したいくらいに。


「それは言葉の綾というものでして……」

「そっかぁ。じゃあ、前から気になってたことなんだけど真弥と遊園地に遊びに行ってから二人の呼び方が名字から名前になってるよね。どうゆうこと?」

「それは真弥さんが名前にしようって言うものだから……」


 実川さんは少しうなずいて納得してくれた様子。

 すると下を向いて俯く実川さんが聞こえるか聞こえないかくらいの声で何かを呟いた。


「ん? どうしたの?」

「――羨ましい。私も紗希って呼んで欲しい……」

「えっ……」


 これってもしかして……嫉妬?


「ごめん、今度から実川さんも下の名前で呼ぶよ」

「嫌だ」

「えぇぇええ!!!?? なんで!?」

「まだ名字で呼び合うのもピュアな感じがあっていいかなーって思ったから」

「あ、そうなんだ……」


 やっぱり女子の気持ちというものは一生理解できない難点なのだろうと思った。

 少し間が空いた後に、実川さんが口を開き落ち着いた様子で言った。


「でも……。クリスマスの日はさ、紗希って呼んでいいよ……」


 実川さんの表情とセリフが可愛すぎて見惚れてしまっていたのに気づいて、俺は慌てて頭を振った。



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