第26話 従姉妹に二人の秘密がバレそう。
「
「私は綾瀬君のクラスメイトの
上手く言葉を返すことのできない俺の代わりに実川さんが誤魔化してくれた。
流石学校では超絶クールな美少女を演じているだけある。
「ふーん。でもなんでただのクラスメイトが家にまで上がりこんでるんですか?」
「それは……」
「二人って付き合ってるんだよね」
「それは断じてない。俺なんかにこんな美少女が好いてくれるわけないだろ」
自分で言うのもなんだが俺は年齢=彼女なしの可愛そうな童貞である。
だがその辺の童貞と少し違うのはS級美少女と同棲しているということ。
でも恋人関係ではないのでそこは、はっきりと否定できるのだ。
「でもなんか怪しいんだよなー」
従姉妹の
これ以上探られたらボロがでそうだし脱衣所には実川さんの歯ブラシやシャンプーがあったりするのでこの状況だと非常にまずい。
一刻も早く里海をうちから追い出さないとバレて親にでもチクられたら何を言われるか分からない。
「じゃあさ、実川さんは何処に住んでるの?」
「それは個人情報なので言えません」
「それじゃあ恋人じゃないなら、私が春兄を取ってもいいってことですよね?」
「……いいけど、なんでそうなるの?」
実川さんの言葉から敬語が消えた。表情を見ると先程よりも余裕のない表情をしている。このままでは修羅場まっしぐら。
「二人共この話はもうやめよう。それにもう遅い時間だし里海は家に帰るんだ」
「えぇー、今日は春兄の家でお泊りしようと思ってたのに」
「いやダメだから」
俺は駄々をこねる里海を玄関へと押して行き靴を履かせる。
「私まだ納得してないから!」
「そーかそーか。捜索したりしても何も出てこないと思うぞ」
そう俺が言うと里海は舌を出して『べー』っと言って家を出て行った。
里海の家はうちから近いのでこれからは気をつけないと……
◆
「はぁー、バレるかと思ったぁ……」
「ごめん、俺に危機感がなかったせいで」
「そんなことないよ、あれは里海ちゃんの感が鋭かったからだと思うけど」
実川さんには本当に申し訳ないことをした。
前に今度遊びに行くとか言ってたけどまさか今日だとは思っていなかった。完全に俺の注意不足なので反省する。
「じゃあ、今度から朝の登校は別々にしたりとかした方がいいかもしれないね」
「――それは、嫌っ」
「えっ……」
「私は綾瀬くんと登校するの楽しいし、これからだって毎朝一緒に登校したい……」
少し照れながらモジモジと喋る実川さん。
その姿が可愛らしくて、なんだか守ってあげたくて心臓の鼓動が速くなるのを感じる。
そして俺は無意識のまま心の片隅にある不安を言葉にしていた。
「実川さんには今、好きな人とかいるの?」
気づいたときにはもう口から溢れていた。
実川さんは少し驚きつつもホッと息を吐いてから俺の方を見つめて言った。
「――いない、こともない」
俺はその言葉を聞いて少し悲しい感情にもなったし、もしかしたらと思いもした。
実川さんが他の男と楽しそうに話しているのを想像すると少しばかり胸が苦しくなったりもした。彼女は出会った頃よりもだいぶ俺に心を開いてくれているし、秘密や思い出も沢山増えたと思う。そして俺はまだ実川さんとの生活を続けたいと思っている。
だからこの曖昧な関係を続けるためには里海や真弥さんにもいつかは話さなければいけない日が来るのかもしれない。
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