第21話  彼氏じゃなくて義兄!?――その妹が可愛すぎる件

 実川さんとその隣に立つイケメンで背の高い男性。

 そして実川さんの口から発せられた言葉は――『この人は――私の義兄ぎけいだよ』


「義兄!?」

葉山蓮はやまれんっていいます。よろしく」


 実川さんの義兄だという男性は気さくに俺の手を握ってきて笑顔を見せた。

 俺も悪い人ではなさそうなので笑って答える。


「私のお父さんと蓮兄のお母さんが再婚してからずっと仲良くしてくれているお兄ちゃんみたいな人なんだー」

「じゃあ朝、実川さんの投稿に写ってた男の人は蓮さん?」

「うん。そーだよ」


 実川さんの彼氏だと思ってソワソワしてた俺がバカみたいだ……

 実川さんに彼氏ができても俺には関係のない話なのに――やっぱり俺はまだ実川さんとの生活を手放したくないと思っているんだ。


 でもいつかは……。


「じゃあ僕は帰るから。紗希、体調には気をつけるんだぞ。お父様と母さんが心配するからな」

「うん。今日はありがとう」


 話が終わると蓮さんはお辞儀してからアパートから離れて行った。

 俺は蓮さんが見えなくなるのを待ってから実川さんと部屋に戻った。


 ベットに座ってテーブルに置いてあるテレビのリモコンを取っていると実川さんが部屋の照明をつけてくれる。


「綾瀬くん、コーヒー飲む?」

「うん、飲む」


 実川さんは電気ポットに水を入れてからベットに座って質問してくる。


「今日どこか行ってたの?」

「あ、うん。真弥さんと水族館行ってきた」

「いいなぁー。なんで真弥は私も誘ってくれなかったんだよぉー」


 悔しそうに足をパタパタさせる実川さん。

 小学生のように駄々をこねる実川さんに俺も続けて質問をした。


「実川さんは朝からお兄さんと何処行ってたの?」

「あ、忘れてた!」


 何かを思い出したのかしまったというような顔をする実川さんは俺の方を向きニコッと笑って言った。


「綾瀬くん。誕生日おめでとう」

「えっ……誰の?」

「綾瀬くん今日、誕生日だよね?」

「あ、あぁ!? 今日って何日?」

「十月三日だけど……」


 すっかり忘れていた。今日は俺――綾瀬春の誕生日だ。

 去年までは家族に祝ってもらっていたけど今年は一人暮らしになったので祝ってもらえないかと思っていた。


「はい! プレゼント。お返しは大丈夫だからね」

「お返し欲しそうな顔してない?」

「バレたかぁ……」


 彼女は赤色の小さな紙袋を渡してくれた。

 誕生日に女の子から始めてプレゼントをもらったので凄く嬉しい。


「男の子ってどんな物がいいのか分からなかったから蓮兄と一緒に選びに行ったんだぁー」

「そういうことかぁ。実川さんありがと!」

「で、早く開けてみてよぉー」

「あ、うん! わかった」


 実川さんに言われ赤い紙袋の中身を取り出すとそれはクラゲのイラストが描かれているスマホケースだった。俺のスマホにスッポリ入るサイズ。



「ありがとう! クラゲ好きだからむちゃくちゃ嬉しい!」

「良かったぁー。真弥が綾瀬くんはクラゲ好きかもって言うから探したんだぁー」


(偶然じゃなかったんだ)


「でもなんで今日が俺の誕生日だってわかったの? 教えてなかったよね?」

「あぁ うん。それは私が転校してきてすぐ授業でプロフィールみたいなの書いたよね?」

「あぁー。そんなの書いた気がする」

「回収された後、先生が後ろの黒板に数週間貼ってたからそれで知ったんだー」

「でもよく覚えてたね。俺、誕生日とか覚えるの得意じゃないからさ」

「それは――綾瀬くんの誕生日だから覚えてたんだよ……」


 彼女は顔を赤面させながらうつむいてなんとか聞き取れるくらいの小さな声で言った。それを見た俺まで恥ずかしくなって心拍数が上がるのを感じる。

 少し無言の状態が続いてから俺は大切な事を質問した。


「実川さんの誕生日はいつなの?」

「え!? なんで……?」

「だって俺だけプレゼント貰うのも悪いし、俺も実川さんの喜ぶところ見たいからさ」


(今、凄い恥ずかしいセリフ言った気がする……)


「あ、うん。ありがと。私は12月25日のクリスマスの日。すっぽかしたらダメだよー」


 彼女はベット転んで白く細い足を伸ばし枕を顔に押し付ける。

 その姿は無邪気でむちゃくちゃ可愛い。


「じゃあ今日はお祝いパーティーしないとね!」

「そこまでしてもらっちゃなんか悪いな……」

「だめですぅ。私の誕生日が小さくなっちゃうでしょぉー」

「そんなことないでしょ」

「じゃあ綾瀬くん買い出しよろしく!」

「俺が行くの!?」

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