新卒パワハラ奮闘記(前編)

《新卒の恐怖体験》


バイト上がりでパチ屋に新卒入社した時の話。


パワハラに悩む方の参考になれば。






バイトの頃の店舗は稼働も少なくアットホームな職場だった。


新卒で配属された店舗は、高稼働のイケイケ店だった。


「うちは体育会系じゃないから。日本海軍式だから(笑)」


幹部の1人はそう笑っていた。





簡単に人物紹介。


1.幹部四天王


2.ドレイの主任3人


3.バイト大勢


4.ドレイの先輩1人


5.新卒2人(私ともう一人)


序列はこんな感じ。


四天王の更に上、エリア長の拠点にもなっていた。


主任3人の中でも待遇が違って、

①軽いノリで四天王の腰巾着主任、

②いいように使われている平均主任、

③四天王に嫌われている真面目主任

といった感じ。


新卒の私の教育係は③真面目主任だった。




バイト上がりとはいえ高稼働店が初めてだった私。


どうしたってミスをしてしまう。


ミスには相応のペナルティを課すのが自称・日本海軍式。


しかし本社からは「6月までは新卒に厳しい指導をしないように」とお達しが出ていた。


その分の叱責は真面目主任が負う。




真面目主任が受けていた体罰の一例。


・気合が足りなければ物陰でビンタ。顔が腫れる


・高稼働エリアを閉店まで1人で請け負う


・稼働が落ち着いたスキに水分補給したことがバレるとビンタ。


・事務作業にミスがあれば腹パン。


・出世に関わる評価は低評価


・階段上から階段下に蹴り落とされる


・・・パワハラってレベルじゃねーぞ。


ちなみに、世渡り上手な腰巾着主任も一応体罰は受ける。


腹筋30回とかの軽いやつね。






1ヶ月が過ぎた。


部下と自分の責任をとってボコボコにされ続ける真面目主任。


私は先輩への申し訳なさと、6月を迎える恐怖で押しつぶされそうな日々を過ごしていた。


そんなある朝の更衣室。


真面目主任と二人きりになった。


真面目主任「最近元気ないぞ?お前大丈夫か?」


この状況で後輩を気遣える主任、神かよ。


私「大丈夫かは主任じゃないですか!オレのせいであんなにやられて!」


主任「お前はそんなこと気にしなくていいんだ!!!」


あ、この人救けなきゃダメだ。


社会人歴1ヶ月と数日、この日のやり取りが私と会社のターニングポイントになる。






数日後の休日、バイト時代の店舗に顔を出す。


古巣にて現状を説明し対応策を乞いた。


心優しい元上司達は話を聞き唖然としつつ、監査部の連絡先を教えてくれた。


(本来、監査部の連絡先は休憩室に掲示しなければいけないそうだ)





監査部に通報し、真面目主任が受けている体罰を説明する。


古株バイトばかりだともみ消されるので、信用できるバイトが出勤する日に調査を依頼した。


「君の身は必ず守る」


監査部の言葉が頼もしかった。





調査当日。


従業員が1人ずつ倉庫に呼び出されて監査部の聴取を受ける段取り。


そして私の名前が呼ばれる。


狭い倉庫のドアを閉め、調査員に私が電話した張本人であることを告げる。


そして前もって用意したビッシリと目撃情報を書き連ねたA4用紙を手渡した。


目撃情報に目を通す調査員だったが、やがて困惑した表情を浮かべながら私の顔を見た。


「日時は分からない?」


そう、証拠を押さえるには監視カメラの検証が必要。


時間が分からないと営業時間全て調査しなくてはならず、それは現実的に不可能である。


社会人1ヶ月目の私にそんな頭はなかった。


というかそもそも、犯行はカメラの死角で行われていたんだし。


新人がたかがチラッと見た情報だけでは証拠足り得ないことだけを学んだ。





意気消沈しながら事務所に戻る。


そこでは四天王の内数人がヘラヘラと話していた。


バイトとも口裏は合わせてあるそうだ。


当の真面目主任まで「何も受けていない」の一点張りで通しきったという。





暗雲が立ち込めてきた。


この日の出勤は四天王、腰巾着主任、真面目主任、私とアルバイト数人。


私以外に証言が期待出来るのは新人バイトのみ。


やっぱり新人しかいない。


というか証言者は私のみの可能性だって十分ある。


証拠が弱い。


イジメの事実は闇に葬られるかもしれない。


考えれば考える程、私の気分は沈んでいった。



【新卒の恐怖体験(後編)に続く】

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