大人げないニート社会人VSゲーム初心者ばぶみ属性JK

 リビングのモニターにゲーム機をつなげて、俺たちはコントローラーを握る。カウントダウンが進むたびに緊張が高まり、スタートの文字が表示された瞬間、二人して前のめりになった。


 それぞれが操作するキャラクターがフィールドを縦横無尽に駆け回って、お互いを攻撃する。俺の家に来てからゲームをすることが増えたとはいえ、まだまだ悠は初心者。幼少期からゲームにのめり込んでいた俺には遠く及ばない。

 しかし、押し入る年齢の波には勝てないのも事実。


「あ、やっば……!!」

「やった!!」


 悠の大ぶりな攻撃を躱そうと後ろに下がるが、カウンターによって背後に回られる。高校生の反射神経には勝てず、反応が遅れてしまった。その瞬間にスマッシュを決められノックダウンの文字が画面に表示される。

 悔しさで顔をゆがめながらソファの背もたれに体重をかける。


「私の勝ちですね!!」

「いやぁ、最後が無ければなぁ。」


 コントローラーを机に置いて冷蔵庫まで向かう。炭酸水を2本だして片方を悠に渡すと「ありがとうございます」と言って飲み始めた。

 ……なんとなく、喉の動きと唇を眺めていると、ペットボトルから口を話して立ち上がる。そのまま、俺の耳元へと顔を近づけて


「少し見すぎですよ。」

 と囁く。

 反射的に離れようとすると肩を抱きしめられる。悠の柔らかい感触にドキドキしていると、そっと触れるように頬にキスをされた。


「ゲーム、続きやりましょう?」


 まるで何でもないようにソファに座りなおすと、コントローラーを握る。

 たぶん、彼女なりに好意を示そうとしてるのだろう。いろいろとやり方が間違っているような気もするが、正しいやり方なんてものを知らない俺は、教えてやることができない。


「まあ、べつにいいか。今度は手加減しないからな!!」

「ええー、さっき手加減してたんですか?ダメですよ、本気でやってください。」


 コントローラーを握りなおして悠の隣に座る。抗議の目を向けてくるが、口元は笑っており、このゆったりとした時間を楽しんでいるらしい。もちろん、俺も楽しい。

 またゲームが始まり悠のキャラクターが突っ込んでくる。


 さっきは手加減などと言ったが、そんな無粋な真似はしていない。ただ単純に反射神経が追い付かなくなってきただけだ。今だって、若いときなら喰らわなかった攻撃が何度もかすっているし、悠の晒した隙を何度も逃してしまっている。


「やった、当たった!!」


 なかなか当たらない必殺技をぶつけられて思わず焦る。

 しつこいようだが、あと三年若ければ避けていただろうし、あと二年若ければ咄嗟に回避コマンドを入力できていただろう。


「いや、今目が霞んでたからなぁ。」

「むぅ…。じゃあもう一回やりましょう。」


 頬を膨らませて不満を言う彼女の顔をつつく。お返しと言わんばかりに俺の両頬をムニムニと掴んでいるが、おじさんの頬なんて触っても楽しくないだろう。

 いや、まだ三十にもなってないが……。ギリギリおじさんじゃないはずだ。


「……28っておっさんかなぁ?」

「お兄さんが通じないかもしれないですね。あ、私はおじさんだと思っていないですよ?」


 悠のフォローが逆に心苦しい。


「よーし、次は手加減しないからな!!」


 首を鳴らしてゲームを開始する。何年もやってきたベテランとしては、初めて一か月もない初心者に負けるというのは恥ずかしいものだ。っていうか、これ以上頬をムニムニされたくない。

 初心者の悠相手に容赦なく抜け出せないハメ技を連発して一気に勝負を終わらせる。唖然とする悠に対してガッツポーズをしたかと思うと、かすかに涙目になっていた。


 やりすぎてしまったかもしれない。


「量さん!!」

「ハイ」


「明日からお風呂掃除お願いしますね!!」


……to be continued

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