第50話ロッツの街2

アエリア達は無事に街までたどり着く

ここに来るまでに様々な違った景色を楽しみながら来たのでかなりおもしろそうにしていたと言っておこう


ちなみにメイフルはハーフエルフで、人との混血である。見た目に違いもあまりないが年月と共に増えたというその身に秘めた魔力は膨大だ

だからこそ、人間の街に堂々と来ることが出来るし、人間と断交した時より密偵として活動していたりする


その姿にメイフルは不安そうにしたのは仕方がないと言える



街に到着するなり、門番とモメかけたのもなんとか収まった


この大陸では力こそ全てだといえど、流石に行き過ぎだと言わざるを得ない



「なんで貴女はいきなり喧嘩をしようとするのですか…」


「いきなり尻を触ろうとしたのは喧嘩の理由にならないと?」


「ええ、あれは持ち物検査ですよ…ごく稀に魔物、まぁモンスターを持ち込もうとする人間がいるんです」


「モンスターねえ。それが尻と関係があるのか」


「ええ、隠す場所として人気なんですよ。暗所では大人くする習性がある、まぁ小さなサルなんですけど。ペットとして流行っているようです」


なるほど、衣服の中で尻の部分、大きめのポケットの中が人気になるのだという事の様だった


「しかしそれが何か問題になるのか?」


「本当に質問が多いですね…。まぁ、その猿なんですがちゃんと去勢しておかないと爆発的に増えちゃうんですよ。間違えて子持ちやらツガイやらを持ち込んでしまうとそりゃもう大変で」


一度に約10匹づつ増殖する、という事らしい

そして集団となると魔物らしく人を襲い始めるのだとか


「集団というのもまぁ1000匹くらいからなんですけど頭もいいですからね。火を使うこともやってのけますし、それくらいからは魔法を使い始める個体も出たことが在るそうです。それで滅んだ街がいくつかありますから」


「それはどのくらいの日数でそうなるのかにもよるだろう?」


「おおむねひと月といったところのようです。1000の次はもう10000ですからね、手が付けられませんよ。外の自然ではそれなりに魔物達のエサになるようでそこまで増える事はないようです。といいますか、天敵がいる場所では一度に増える数も少ないみたいですけどね…」


街の中で愛玩動物として飼われた場合にのみ起きるという事の様だった

安心して暮らせる寝床と食料が得られる場所では出産数が増えるという


「なるほどな、面白い。人のみを狙った魔物ということか」


去勢しておけば増えることもない。

個体は国や街によって完全に管理されているし、そしてそれなりに良い値段で取引されているという


だから冒険者などが小遣い稼ぎの為にこっそり持ってくるといった事が後を絶たない


「そこらの魔物から得られる素材などよりもよっぽど高価になるみたいですからね…」


道具屋まで来ると、メイフルは中に入って地図を求めた

とはいえ、要所になるような場所にある拠点などはここには書かれていない


「だがそれでも地図が簡単に手に入るものなのだな…私の国ではまだ解放していないし、当時でも国単位の地図はあれど大陸全土となれば売る事すらなかったのだが」


「ここでは情報が金になります。だから国が管理しているものもあるでしょうけど、これなどは冒険者が独自に描いたものなので縮尺も適当だったりしますよ」


「そういうものかね」


「そういうものです」


多少の食料を買い込み、一先ず宿屋に部屋を取る

その後併設されている食堂にて例の攫われたかも知れないエルフのリストを眺めるとアエリアは、覚えた、とそう言った


喧嘩っ早いのにこの頭の回転の速さは何なんだとメイフルは呆れるが


「それにしても……この街は治安が良さそうに見えるな」


それなりにいい方だとメイフルは言う

いくつかある街の中でもここはかなり治安良く、人も集まっているそうだ


だが、それだけにアエリアはここを怪しいと踏んでいる


「それにしても、この大陸は歴史が古いと聞いていたがそうでもないようだな」


街並みは綺麗で、それこそ建てられたものも新しく綺麗見える

それだけに、違和感も感じる


「すべての物が新しい…」


「それはそうですよ、戦乱の歴史ですから…この街もそれこそ何度か壊滅しています」


「それにしては人が多い」


「人間は強いですから…だからエルフも攫われたのです」


それはアエリアの大陸ではありえないと感じている

なぜならばエルフは総じて強いといえたからだ


膨大な魔力はそれだけで強い

初級の魔法ですら、かなりの威力になる

身体強化も凄まじい力を得る


というのにだ、攫われた?


そもそもそこがおかしいんじゃないか?

先ほどの衛兵も強いと言えば強いだろう

だがアエリアの城の衛兵ほどは強いと感じなかった


違和感


それが既に今のアエリアはある


だが実際攫われている…


「ひとまず奴隷商の所でもあたってみますか」


「奴隷商?そんな商売があるのか」


「ええ、ご存じないです?そういえばノーチェスには居ませんでしたね」


「ああ、私たちの大陸では禁止されているからね。皆忠実にそこは守っている。まぁ犯罪者の強制労働くらいはあるが…」


400年前はあった。戦乱の世だったこともある

戦争で負けた相手の国の人間を金に換えていた、クソみたいな時代


それを変えたかった。だからアエリアは立ち上がったのだから


そんなものがこの大陸にはまだある

それは人種の違いがそうさせているのだろうことは容易に気が付く

だが、アエリアには到底それが許せないことだ


奴隷商に会って冷静でいられるかは分からない


それでもアエリアは行くしかないと腹をくくった




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る