第16話 廃墟屋敷の謎に迫れ①

「何ですか此処?」


 馬車――例の如く後ろに馬を引き連れた――にのって王都のはずれに連れて来られた私は、思わず嫌な顔をしてしまう。王子が良い所と言っていたのだが、どう見ても廃墟だ。まさかいい歳して肝試しとか言わないわよね?そういうのは一人で嗜んで貰いたいものだ。


 因みに私は幽霊などは信じていない。世の中超能力はあっても、幽霊なんて物が存在する訳けないからね。私が嫌なのは怖いからではなく、単純にぼろっちい建物の中に入りたくないだけだ。絶対虫とか埃だらけなのが目に見えているもの。


「ここは王家所有の屋敷さ。古いし使い道も無いから近く取り壊す予定だったんだが、ある商家の人間から是非譲って欲しいと言われてしまってね」


 こんな廃墟みたいな屋敷を欲しがるとか、頭がおかしいとしか思えない。

 手直しして転売でもする気なのかしら?


「手直しして利用するには、明らかに老朽化が進み過ぎていて向いていない。にもかかわらず、その男はかなりの額を提示してきているんだ。おかしいだろ?」


 ああ、そう言う訳ね。


 何となく此処に連れて来られた理由を私は察する。要は何か裏がありそうだから、私にこの場所を調べろと、王子はそう言いたい訳だ。


 天気がいいからデートしようと引っ張ってきた先が廃墟みたいな屋敷で――しかも仕事だったと。「私のどきどきを返せ!」って叫びたくなるふざけた話である。


「報酬は弾むよ」


 王子の素敵な笑顔――ではなく報酬を弾むという単語にくらっと来る。前2回の仕事の報酬は破格の物だった。今回もきっと素敵な額に違いない。


「分かりました。お引き受けします」


 本気で王子と結婚まで行くとは考えていない身としては、稼げるときに稼いで、しっかり親孝行――仕送り――しておきたい所。汚れそうなので余り気乗りはしないが、まあそこは我慢するとしよう。


「ありがとう。流石ハニーだ」


 しかし見れば見る程ぼろい建物である。

 入った瞬間崩れたりしないでしょうね?

 まあ私は超能力があるからいいけど、王子達は結構危ないんじゃないかしら?


「じゃあ僕は此処で待ってるから、後は頼んだよ 」


 えぇ……普通婚約者だけを向かわせる?


 「お前は来ないんかい!?」という言葉を喉元で飲み込み、ジト目で睨み付ける。しかしそんな私の視線などどこ吹く風状態。王子はニコニコしながら手を振って、私を送り出そうとしてくる。


 この糞王子め……


 心の中で王子に悪態を吐きつつ。私は大きく溜息一つ吐いて、屋敷――廃墟――へと一人向かうのだった。

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