山田くん

僕のクラスに『山田くん』という男子生徒がいる。

山田くんは、学校が終わるとすぐ家に帰る、普段人と話さない、いつも一人。

そんな彼は、何を考えているのか分からない。

しかも、謎のオーラを纏っている。

とても不思議な男の子だ。

僕は、ある日山田くんが気になって、後を追う事に。

家に帰ったら何してるんだろう。

これで山田くんの行動が分かる。

そう考えながら彼の後を追う。

彼の家らしき場所に辿り着いた山田くんは、近くにある人気が少ない空き地に入っていく。

家に入らないんだ……。

僕は、山田くんの行動を見ようと空き地を覗く。

すると……


山田くんは、空き地の隅にあるはえたかっていて、赤と黒が混ざった気持ち悪い色に染まった大きな謎の物体を見ていた。

うっ……。

その物体を見ていると、吐きそうになる……。

吐き気を我慢して、恐る恐る山田くんに声を掛ける。

「や、山田くん! それって──」

僕の声に反応した彼は、ゆっくり僕の方へ向き言う。

「これ……なんだ」

信じられないものだと分かった瞬間、吐き気が我慢できなくなって、その場で吐いてしまった。

「そんなに驚かなくても……」

更に彼は、謎の物体を小枝でつついていた。

「これ……空き地に捨てられていた大量の動物の死骸を僕が一つにまとめたんだ」

「や、山田くんが……!?」

「僕……裁縫が得意だから……」

物体をよく見ると、確かに縫い目がある。

こんなのを山田くんが……。

「そ、それって……犯罪でしょ?」

ビクッと反応する山田くん。

「犯罪? 空き地に死骸遺棄する人が犯罪だよ……僕はただ……この空き地を綺麗にしようとしただけ……」

こんなの……間違ってる!

「……おかしいよ」

「………。だから僕は……避けられているんだ」

っ!?

そうか……。

だから彼はいつも一人でいるんだな。

「……ごめん」

申し訳なくて、僕は謝った。

「別にいいよ……。一人が大好きだし」

………。

沈黙する。

そして、

「僕の家……来る?」

と、山田くんが誘ってきた。

「え? いいの?」

「君が僕の作品を勝手に見たから仕方なく……だよ」

「山田くん……怒ってる?」

僕が聞くと、山田くんは

「怒ってないよ……でも……僕の作品を汚すような真似したら怒る」

と、殺気に満ちた表情をして言った。

山田くんからは負のオーラと怒りのオーラを感じる。

そんなにこの作品、出来が良いんだ。

死骸をぐちゃぐちゃに縫い合わせて作り上げた気持ち悪い物体が山田くんの作品……。

「じゃ、じゃあ行くよ」

僕は、山田くんの誘いに乗る。

「ついてきて……君に見せたいものがある……」

僕に見せたいもの?

何だろう…。

と、疑問に思いつつ、彼の家に行く事に。

ガラガラ。

引き戸を引いて、家に入る。

すると……


うっ!!

家に入った瞬間、酒臭い匂いが襲い来る。

「この匂い……何」

「あぁ……僕の父さん……酒好きで……いつも酒飲んでる……」

だからこんなに酒臭いのか……。

「それで……いつも母さんに怒られてる……」

「山田くんは大丈夫なの?」

「これが……僕の……日常だから……大丈夫…」

山田くんはよく耐えられるな。

鼻をつまみながら2階へ上る。

「もうお酒飲むの止めなさい!!」

「うるせー!!」

という怒号を聞きながら彼の部屋に入る。

僕だったら……こんな生活嫌だな……。

彼の部屋に入ったら、さっき聞こえた怒号が消え、急に静かになった。

彼が電気を付けると……


部屋には、ミシンや糸、針が大量に置かれ、山田くんが作ったとされる作品が飾っていた。

気持ち悪いというより、物凄い光景だ。

部屋中を見渡してみると、山田くんが

「これ……」

と、僕に見せてきた。

それは、バッタ同士がくっついている謎のものだった。

「これ……、一番の……力作……」

「こ、これ……どうしたの?」

恐る恐る山田くんに聞くと、

「バッタとバッタをくっつけたらどんな作品になるのかな……と思って……作った……」

バッタ同士の謎のものを見ながら言った。

「綺麗に……縫ったんだ……」

まじまじと謎のものを見つめる山田くんを見て、背筋が凍り始め、何故か怖くなった。

何故なら……

山田くんがという衝動に駆られる目をしていたからだ。

「ん?……どうしたの?」

「いや……縫うの上手いなと思って」

「でしょ? バッタ同士がくっついたらこんな姿になるんだな……」

ヤバい…。

山田くんの頭は今、という感情が芽生え始めている。

ここから逃げなきゃ……!

「ぼ、僕……帰るね」

「もう帰るの?」

「じ、時間だし……」

と、僕が家を出ようとすると、

「まぁ……いいか……明日も来てね……」

山田くんにそう言われた。


翌日。

山田くんはいつも通りに学校が終わったら一人で帰る。

だが、今日は僕と一緒だ。

実際、彼の家は住み心地悪いと思うし、二度と行きたくない。

でも彼は僕の手を強引に引っ張り、家に連れて行こうとする。

「きょ、今日も見せたいものがあるの?」

「……。うん、昨日見せたバッタよりも最高傑作なんだ……」

そう聞いて、僕は嫌な予感がした。

ガラガラ。

引き戸を引いて、彼の家に入る。

その瞬間、今度は血生臭い匂いが襲い来る。

「あ、あの……山田くん―─」

「これ……」

と、見せてきたのは……


が置いてあった。

「うるさかったから……静かにさせようと思い……縫合したんだ……」

ありえない死体を見た僕は、吐き気を催す。

「やっぱり……人間を……くっつけたら……最高……だね……」

山田くんからは完全に生気が失われていた。

「山田……くん……」

そして山田くんは、僕の方を向き言う。


「次は……だね……」

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