第19話

「アンジェリン。さっきの、誰?」    「上に住む子だよ。」          「日本人?」              「うん、そうだよ。」          「何で英語で話してたの?」       「あの子、海外が長いから、英語の方が話し安いんだよ。」             「ふ~ん。」              「テレビ、見ない?」         「今?」                「ねー、見ようよ〜?!」        「あのさ千鶴子、ハッキリ言っておくけど、あれは私のテレビじゃないんだから。見てる時に戻って来たら嫌だから。何か言われたくないからさ。だから、余りそうしてしつこくしないでよ?」             千鶴子の顔が豹変した。又、鬼の顔付きだ。「おい、アンジェリンお前?良い気になるなよ?!」                そう言って近付いて来た。      「何?!怒らないでよ!」        千鶴子が側に来た。だがその時、周りを見てこう言った。              「何だ?何だよ?!」          アンジェリンが訳も分からずに千鶴子を  見る。                 「おい、どうした?分かってんだよ。いるのが。出て来い?!姿を見せろ。早く出ろ! いるのは分かってんだよ!!」      「何言ってんの?!」          「フフフ、お前を守ってる奴が2体いるよ。」                「エッ?!」             「2個付いてるんだよ、お前には。お前を 守る、お前の味方が。」         「何それ?千鶴子、何言ってるの?!」  千鶴子はアンジェリンを無視して宙に向かって言った。              「分かってんだよ。俺に分からない筈がないだろう。だから早く姿を見せろ?!」   千鶴子が何度かそうした事を言って繰り返した。                  「そうら、出て来たな。やっと姿を表したか?」                 千鶴子が、千鶴子に憑依した何かが言った。アンジェリンには何も見えなかった。だが その時、彼女は感じた。何かの存在を。確かにそれは2つで、自分の近くにいる様に感じられた。                「お前はコイツラに守られているんだ。」  千鶴子がアンジェリンを見ながら言った。「それは何なの?!」          アンジェリンは千鶴子が恐かった。だがそう聞いた。                千鶴子は答えない。           「ねー、何なの?!」          「ふん、お前らが俺にかなうと思うのか? お前らなんかにそんな力は無い。」     千鶴子が嬉しそうに、馬鹿にしながら鼻で 笑った。                すると片方の、アンジェリンに近い何かの 霊が千鶴子に飛びかかった。       千鶴子は目をギラギラさせながら大きく口を開いた。ガーッと口から声が出た。    すると飛びかかった霊は跳ね飛ばされた。 物凄く強い衝撃を受けて。そしてかなりの打撃を受けている。            もう片方の霊が気遣って見ている。    アンジェリンにはそれらが分かった。見えないが、感じた。             「さぁ、さっさと行け。コイツから離れろ。お前らには何もできない。だから早く消えろ。」                  霊達はまだそこにいる。戸惑っている。  「早く消えろと言うんだ!消えないと、お前らを消すぞ?!いいのか?!お前らを完全に消すぞ?!」              すると片方の、打撃を受けた霊がサーッと 窓の方へ飛んで行った。そして消えていなくなった。                「フフフフ。」              千鶴子がもう片方の、残った霊を見た。  「お前はどうした?消されたいか?おい、 お前は、完全に存在が無くなっても良いのか?」                 その霊はしばらくは踏ん張っていた。   「さっさと消えろ!出て行け!!」    千鶴子が怒鳴った。するとその霊もやはり サーッと飛んで行き、窓を突き抜けていなくなった。                「アッ?!」              目には見えなくても、アンジェリンは2つの霊がそうやっていなくなったのを感じて、 とても不安になった。          「さぁ、邪魔なのがいなくなった。これで お前にはもう何の力も無い。丸っきりな。」                 千鶴子がアンジェリンに迫って来る。アン ジェリンは後退りする。         そして千鶴子はアンジェリンを壁に追い詰めて前に立つ。              「お前はもう完全に俺の自由だ。フフフ、 お前のその命は俺の物だ。」        アンジェリンは恐怖に顔が引きつった。殺される…。そう思いながら弱々しく千鶴子の 顔を見つめた。             その時、ドンドンドンドンドンドン!!と ドアを激しく何度も叩く音がした。

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