第17話 ネコ科はネコ科でも後半戦

「半分ウソ?」


言葉にしてみて頭を整理しようとしたが、それでもなお言葉の意味が見えてこない。

すぐさま電話で言葉の意味を確認したいと思ったがまずは琴音さんにこれを伝えなくてはいけない、わざわざメールで送って来たのも彼女なりの何か理由があるのかもしれないと思い、メールを返信する。


「いや、伝えてくれて本当にありがとう」


彼女にとって人の言葉の本音を読み取っているとゆう事を改めて伝えるのはとても勇気がいる事だろうし、思うところもあるだろう。

この能力のせいで嫌な思いをしていないはずはないのだ。

それでもこの事を伝えてくれたのは嬉しい。


10分ほど置いてから返信の通知音がなったので画面を映した。



「友達になにかあるのは嫌だったから…





私と友達やめたくなったらすぐに辞めていいからね。」


10分の空白の意味が分かりすぐに返信する。


「辞める訳ないから安心して欲しい、信じてほしい。

 逆に俺と友達止めたくなる事はないの?」


今度は五分程で返信が来た。


「実は私ね、良太君が噓ついてるかどうか分からないんだ。

だから時々あなたが何考えてるか分からなくて不安になる。

あなた達以外はみんな分かるのに。」


俺だけ分からない?

妹の言っていた因果と何か関係があるのだろうか。


「変体なキモイ宇宙人も、あなたの妹の美咲ちゃんもいい人だけど、言えない何かがあるのは会話してると分かる。

でも同時に二人とも優しいなとか、噓つかないで素直に話してくれてるなってのもわかちゃう。」


「結局メールでもごちゃごちゃしちゃったからまとめると、良太君は信じてるから

友達だし、二人の事もこの人達とならずっと友達としていたいと思った。」


琴音さんも生徒相談部に何かしらの意味を求めているのだろう。

そして素直に彼女の言葉が嬉しかった。

なら後はこちらも行動で返すだけだ。


「俺も琴音を信じてるし、みんなを信じてる

だからみんなとずっと友達でいたいと思ってる」


「そっか、私だけじゃなくって嬉しいな」


「取り敢えず模月先輩の事はもう少ししっかり考えてみる、

何かあったらまた連絡するから」

「後は何かある?」


「もう大丈夫だよ、お休み良太」


「お休み琴音」


スマートフォンを閉じて立ち上がって風呂場に向かう。


「ちょっとお風呂にお湯入れてくる」


少し遠ざかった足音がする部屋で美咲は呟いた。


「そんなにいいイラストかマンガがあったからってニヤけすぎでしょ」


「なんか言ったか」


「別にー」






「すみません、お待たせしました」


模月先輩が俺たちを見つけると少し慌てて走って来た。


「いえいえ、気にしないで下さい」

「こっちこそ急に妹を連れて来てすみません」


「人は多いほうが楽しいですし、それに私も美咲さんとはもっと話してみたいと思ってましたから」


「模月先輩からそう言ってもらえるなんて感激です!」


まあ、学園のアイドルみたいな人だしな。

この状況は友人から命を狙われるのも納得である、いや

普通の友人は命なんて狙わなくないか。


「じゃあ早速行きましょうか」


美咲を真ん中にし程よく照りつける日差しの中歩き始めた。



「ここみたいですね」


明るい色を基調としたオシャレなカフェみたいなお店である。

ガラスから店内の様子猫の様子や、猫と楽しそうに遊んでいるお客さん様子が見える。

とゆうか、やけに二人が静かだ。

目線を二人に向けると妹は目を輝かせて興奮気味にガラスにべったりと顔を近づけ

女の子がしてはいけない顔をしていて、片やクールビューティーな模月先輩を見ると

心ここにあらずといった感じで、ただただ猫をガラスから見つめ続けている。

この二人を店内に入れて大丈夫なのだろうか。


「あの~二人とも入りますよ?」


するとはっ、と意識が戻り少し恥ずかしそうに二人とも入り口の方に歩いて来た。


「ヤバイじゃんこれ、天国じゃん」


「そうね、可愛すぎるわね」


「入店前にその満足度ですか」


苦笑いしながら入り口の戸を開け、靴をしまい消毒と受付を終えるともう一つの扉を開けて猫のいるスペースに入ると大小やさまざまな色猫が出迎えてくれる。

店員さんから注意等などの説明を受けている間も二人はもう猫に触りたいのかソワソワが目に見えて分かる。


「では最後に質問等ございますか?」


「大丈夫です」


二人も各々返事を返すと「では、ごゆっくりどうぞ」と言ってまた仕事に戻って行き、途端に待ってましたと言わんばかりに美咲がすぐさま近くに座っている猫に飛びつく。


「きゃー可愛いー!」


このようなのには慣れているのか、近くで奇声を上げている美咲にはどこ吹く風で猫は気にせずぐったりと目線だけ向けてリラックスしながら座っている。

灰色で小さな猫であったが、整った毛並ときれいな黄色い瞳からどことなく品性が漂っている。


「よしよ~し」


美咲が猫を撫で始めると、模月先輩も控えめながらその猫を撫で始める。

普段は気を引き締めている先輩もこの時ばかりは顔が緩み、年相応の可愛い笑顔をのぞかせている。

その顔を学校でもすればもう怖いものなしだろう。


とゆうか、何というか、元々猫も好きだがこの構図は最高すぎないだろうか、

かわいい猫に、美人と美咲と、幼い笑顔を見せる先輩。

しかも二人とも私服だ、これを学校でも販売すれば億万長者も夢ではないだろう。

ああ、生きていて良かった。

俺は無意識のうちにスマートフォンを立ち上げ気がつけばスマホで撮影していた。

最近のスマホは画質がいいがその時ばかりは、これでも足りないと思った。

天国とはここだと見つけたり、因果が変わるのはここしかありえないだろう、

今この時私は世界の真意を理解したのだから。


「模月先輩はどんな猫が好きなんですか?」


「スコティッシュフォールドとかマヌルネコとか毛がふさふさな猫が好きね、

美咲ちゃんはどんな猫が好きなの?」


「私はメインクーンとかサイベリアンとか大きい感じの猫が好きですね」


「いいわね、今は猫飼って無いのかしら?」


「お兄ちゃんの許可が出なくて」


不満そうな顔をこちらに向けてくるが流石にあれは無理だ。


「トラは無理に決まってるだろ」


「トラ・・・?」


「クラスの友達たちにトラを部屋に入れられたんですよ、それが思いのほか妹に懐きまして」


「ごめんなさい、それを聞いてもあんまり頭が追いつかないわ、そもそもトラって部屋で飼えるの?」


「ほら見ろ、やっぱり先輩も準備や設備も無しに飼うなんて無理って言ってるじゃないか」


「ごめんなさい、そうゆう事じゃないの」


そうこうしているとうるさかったのか、猫がすっと立ち上がるり軽々と飛跳ね高いところに行ってしまった。


「逃げられちゃいましたね」


「そうね、そうゆうところも可愛いのだけど」


フフっと笑うとまた次の子をロックオンしたようだ


「この子も可愛いわね」


「ホントですね!」


女の子同士だからか、猫好き同士だからかそのまま二人で次の猫に向かって行く。

少し後ろを歩きながらスマホを確認すると悟史に頼んでいたのが来ていた。


「先輩について少し気になることを言ってたよ」


メールを開き本文を確認した。









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