第5話 確認テストの返却。だが正直、結果には興味はない

「昨日やった確認テストの結果を返すぞ!」


·········確認、テスト。ああ、あれか。昨日やったやつ。でも、正直、結果なんてどうでもいいんだよな。赤点がないってことだし。赤点なしなら、必然的に成績にも反映されないだろうからな。


「大橋」


俺は名前を呼ばれ、昨日の確認テストの結果をもらう。


「大橋、お前すごいな!先生がこの結果見たときはすげぇ引いたぞ!」


「·········」


これに対して俺はなんと返せと。『そうですか』だとなんかそっけないし、かといって『ありがとうございます』はなんか違う気がする。

俺は、ペコリと会釈だけして席に戻った。俺の前の席に座る筋肉くんが俺が席に座ると同時に後ろを振り返って、


「大橋、盛岡先生がなんか絶賛してたよな。結果どうだったんだ?」


筋肉くんはそう言って筋肉くん自身の結果を俺に見せてきた。これは、あれだな。等価交換と呼ばれるやつだな。俺の見せたからお前の見せろよって言いたいわけだ。俺は別に見られて困るような結果(主に赤点)ではないから躊躇はないんだけど。


大橋良太

国語 100(学年1位)

数学100(学年1位)

英語100(学年1位)

総合300(学年1位)


「うお、すげぇ。全部満点か········。それに比べたら俺は見劣りするよな」


「そんなことないだろ。その結果も普通にいいと思うぞ」


伊藤響(筋肉くんの本名)

国語 91(学年21位)

数学 80(学年36位)

英語 100(学年1位)

総合271(学年15位)


「このクラスの総合の平均は261点。普通にすごいぞ。巷では名門校なんて言われているけど、こんな平均点は先生初めて見たぞ。良くやった!」


盛岡先生は褒め言葉をこれでもかと俺たちに投げかけてくれたが、多分、誰もがこの確認テストの結果について興味はないと思う。俺もそうだし。


昼休みの時間になり、俺は筋肉くんと眼鏡くんと昼ごはんを食べていた。筋肉くんは肉盛りだくさんの弁当を、眼鏡くんは見た目にそぐわないフルーツまみれの弁当?を食べている。眼鏡くんが食べているそれは弁当と呼んで良いのだろうか。甚だ疑問だ。

俺は、一人暮らしをしているので自分で作ってきたものを食べている。今日は白米とからあげ、トマト、きんぴらごぼうなどなどだ。


「明日から通常、授業だろ?」


「そうだな。荷物もそれなりに増えそうだよな。朝大変だ·········」


この学校は指定のリュックがあり、それ以外での登校は認められていない。その指定のリュックもまた曲者で、登山バックみたいな形状をしているのだ。正直、これを背負って学校には来たくない。でも、校則でそうなっているからしゃあないちゃしゃあない。


「そうか?俺は朝、トレーニングが出来ると思うけどな」


俺の体が一瞬震えた。それは、昨日のそれはもう恐ろしいあのワンシーンが思い出された。そう、昨日トレーニングジムに連れて行かれたあれだ。トレーニングジムには、筋肉ムキムキの少し引いてしまうくらいの体をしている集団があった。眼鏡くんはその変態集団にすぐに馴染み、筋トレをしていたが、俺は全く馴染める気がせず、けど、向こうは俺に絡んできて筋トレをやらされた。そのせいで俺は今日、筋肉痛であったりする。もうあれは勘弁願いたい。


「そうだね。朝のトレーニングは効率的だ。僕はこう見えて朝走っているんだ」


どう見ても眼鏡くんはガリ勉にしか見えないんだけど···········


「お、奇遇だな·····。俺も朝走ってんだよ」


なんか気が合っちゃってるな。まぁ、俺も朝走ってるけどさ。


そんな話をしていると、


「良太」


突然、俺の名前が呼ばれた。


「えっ·········!!」


筋肉くんが顔を真っ青にして震えだした。眼鏡くんは、いつの間にか姿を消していた。


それは、加藤の登場によるものだ。


「なんだよ、加藤」


俺は恐怖を我慢しながら加藤にそう返した。加藤は髪を少しいじりながら、


「さ、さっきの確認テスト、何点だった?」


·············?


「か、確認テスト?」


「そ、そうよ。なんで一度で理解できないわけ」


··········突然すぎて理解が及ばなかったのだが。まぁいいか。


「ほらよ」


俺は机の中をあさり、結果の個票を加藤に渡した。加藤は、それを見ると、


「·········ま、負けた··········」


そう呟いていた。

負けたも何も俺は誰とも今回戦っていないのだけどな。まぁ、加藤は常に誰かと戦闘中なのだろう。それがあの冷たい目と態度として出ているのだろうな。嫌いな人は嫌いだろうけど。

加藤はすぐに結果を俺に返してきた。加藤は俺に結果を返すと勉強しだしていた。


ほんとに、加藤は不思議なやつだ。

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