3

 ぼくらは能登内浦線を自転車で走り、家に向かっていた。


 海沿いの道に出た時だった、


 ふと、海の方の空で、何かがキラリと輝いたような気がした。


「!」


 ぼくは自転車を止める。


 間違いない。楕円形の何か白いものが、遠島山とおしまやま公園の上に飛んでいる。


「おい、どうしたんだ?」


 ぼくがいきなり止まったことに気付いたツトムが、道を戻ってきた。


「あそこ、何か飛んでないか?」


 ぼくが指さす方向に顔を向けたツトムにも、やはり見えたようだ。驚いた顔でぼくを振り返る。


「ほんとだ……あれ、なんだろう? まさか……UFO? いや……恐怖の大王か?」


 ……。


「確かめよう」


 ぼくは自転車を方向転換する。


「お、おい……本当にUFOだったら、どうすんだよ?」


 怯えた顔で、ツトムが言う。


「もしあれが恐怖の大王だったら、どっちみち人類は滅亡するんだ。ぼくらだって死んじゃうんだ。それがおそいか早いかの違いだけだろ。怖いんだったら、お前は先に帰ってろよ」


「ちょ……まてよヒロシ!」


 そう言うツトムの声を背にして、ぼくはペダルを踏んだ。


---


 結局、ツトムもぼくに付いてきた。


 近づくにつれ分かったのだが、どうやらそれは「舟隠し」の上空にいるようだった。「舟隠し」は公園の北側にある、少し奥まった入り江だ。


 青年の家の駐車場に自転車を停め、しらさぎ橋(奥能登唯一の吊り橋)の手前から桜の広場を通って「舟隠し」の海岸に向かう。


 謎の飛行物体が浮かんでいる、その真下の砂浜に、五十センチ四方くらいの大きさの何か四角い形をしたものが置かれていた。


 自転車から外して持ってきたライトで照らしてみると、それは何かの機械だった。メーターやつまみがたくさんついている。文字も書かれているようだが……ぼくらの知らない文字だった。日本語でもアルファベットでもない。


 まさか……宇宙人の文字?


 その時だった。


「ナニヲシテイル!」


 奇妙なアクセントの声が聞こえ、そちらに振り向いたぼくらは……思わず悲鳴を上げてしまった。


「うわああああ!」


 ライトの中に浮かび上がった姿は、間違いなく宇宙人だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る