第3話 ルークの無実が判明する

警備兵「だいたい、子供が毒なんてどうやって手に入れたんだ?」


トール爺「それを調べるのがお前らの仕事じゃろうが!」


トール爺の言い分にムッとする警備兵。


その時、警備兵の後ろから声を掛ける者が居た。


『これは何事ですか?』


出かけていたアルヴァン神父とシスター長のココアレスが帰ってきたのだ。


    ・

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    ・


神父「なるほど、それで、あなた方は、確たる証拠も無いのにルークを犯人と決めつけたのですね?」


シスター・タエ「ですが神父様、あの子は一人だけ平気だったんですよ、同じ毒入りのスープを食べたのに。ルークが犯人としか考えられません!」


シスター・プーリア「だいたい、あの子は昔からいつも気持ち悪かったのよ! 他の子供達や私達までもが風邪で倒れたりお腹を壊したりしていても、あの子だけがいつもケロっとしているんですよ? 何かおかしいでしょう!」


神父「シスター・タエ。シスター・プーリア。あなた方は知らなかったのですね。あの子は、ルークは、赤ん坊の頃はとても身体が弱く、いつも身体を壊していたのですよ。あまりに身体が弱く、多分長くは生きられないだろうと言われていたのです」


プーリア「あの子が?!」


タエ「ちょっと信じられないですが……」


神父「正直、私もあの子は遠からず天に召されるだろうと諦めかけていました。それで、あの子の死後の幸福を神に祈ったのです。ところが、それからです、あの子はピタリと病気をしなくなりました」


シスター長「そうでしたね……。あの子は少し変わったところはありましたが、優しい良い子でしたよ?」


シスター長「私が口煩く厳しいことを言うと、嫌な顔をする者が多いですが」


シスター長がシスター達を見ると、シスター達は目を逸らす。


シスター長「でも、あの子は嫌な顔をせず、それどころか、それはどうしてダメなのかちゃんと理由を聞いて理解しようとしていました。そして理解したら、ちゃんとそれを守っていました。とても賢い子でしたよ。


それに、いつもみなの濡れたタオルをキレイにして、乾かしてから渡してくれていましたよね。あの子はおそらく【クリーン】と【ドライ】の魔法が使えたのではないでしょうか。一人だけ毒の影響を受けなかったのも、その能力のせいでは?」


タエ「そんな…、そんな幼いうちから魔法を使えるなんて、貴族の間でも天才と言われるような限られた才能の持ち主だけですよ? あの子にそんな才能があるとは思えませんでしたが……?」


神父「おそらく、祈りが聞き届けられて、神のご加護を頂いたのだと思います。あの子は神に愛されし者なのでしょう。…そのような者が、毒で人を苦しめたりすると思いますか?」


プーリア「で、でも……じゃぁ、お金がなくなったのは?! あの子以外に盗める者はいなかったはずです。状況を考えれば、ルークがやったと考えるのが妥当じゃないですか?」


神父「その件についてはもうあの子を責めるなと行ったはずですが? それに、状況証拠だけで確たる証拠はなかったではないですか。強制的に着ている服をすべて脱がせ全裸にして調べるという、非人道的なことまでしたのに、結局何も出なかった。それでも納得していなかったのですか?」


シスター達「……」


アマリア「…あ……あのぉ~……」


シスター長「なんです? シスター・アマリア?」


アマリア「お金の件なんですが……その……アリマシタ……」


神父「はい? ちょっと声が小さくてよく聞こえなかったのですが…」


アマリア「ゴメンナサイ!! お金は、ありましたっ! 盗られたわけではなかったようでして……」


シスター達「!!!!!」


シスター長「どこにあったのですか?」


アマリア「その、私の部屋の、下着入れの中に……さっきルークを探している時に、もう一度部屋の中を確認したら出てきまして……」


プーリア「どうして下着入れなんかに?」


タエ 「ルークが隠したのね?」


アマリア「いえ、違います、その、私が、自分で入れました……」


神父「?」


アマリア「その……机の上に置いたのですが、やっぱり泥棒に入られたら大変と思いなおして、箱の中に放り込んだのでした。それを、私ったら、すっかり忘れていて……」


プーリア「なんですって?! …それじゃあルークは……」


シスター・ブルケ「まぁそれでは、ルークは無実だったってことになりますね。私はそうなんじゃないかと思っていましたわ、私は、最初から!」


プーリア「調子がいい事言わないでよ、シスターブル!」


ブルケ「私はブルよ!」


タエ「そんな……で、でも! お金の件は違ったかもしれないけれど、毒の件は? あの子が犯人かも知れないじゃないですか? お金の件で疑われた事を恨みに思って、とか…」


トール爺「そうじゃ、一人だけ無事だったのが何よりの証拠じゃ! 間違いなかろう!」


神父「もし本当にあの子が犯人だとして、自分だけ無事だったら、自分が疑われるとあの子だって考えると思いませんか?」


プーリア「そこは……子供の浅知恵ですよ。きっとそこまで頭が回らなかったのじゃないかしら」


その時、そこに、別の警備兵がやってきた。


警備兵「ちょっと失礼、神父様はいるかい?」


神父「ここに居りますよ、何か御用ですか?」


警備兵「実は昨日、市場のほうで毒キノコ騒ぎがあってね」


神父・シスター達「「「「「毒キノコ!?」」」」」


警備兵「おお? やけに食いつきがいいな、なんなんだ?


いや、なんでも、C茸と間違って、G茸が売られていたらしいんだ」


神父様「なんですと!?」




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