第28話「VSフィアーズギルド-強者-」

 シャドウゴーレムとテルンを倒した蓮達は意識を失っていたシュトルの元に集まっていた。


「それにしても五十嵐、どうしてお前がここに?」


「こいつらに俺の仲間がやられたんだ。12階層に入った時に急に攻撃を受けて……その復讐のために来たら丁度お前らがいてな」


「そうだったのか。その仲間ってのは……」


「二人はそのまま亡くなった。なんでも面倒なスキルを持つ奴はギルドに入らねーなら始末するとか言われてな。抵抗はしたがホルダー何人も相手には無理だった」


「……すまない。俺達はこれから他のエリアの援護に行こうと思うが五十嵐はどうする?」


「――行かねーよ。用があったのはこいつらだけだ。他は別にどうでもいいからな」


 五十嵐はそう言い放つと蓮達の前から去って行った。


 呼び止めようとはしたが仲間の死のことが過って声を出すのを止めた。


「――そういえば、葵と百合は怪我の具合どうだ?」


「ポーションも飲んだけど万全とまでは行かないね」

「私もさっき吹き飛ばれた時のダメージがまだ残ってて厳しいかも……」


 二人とも動くことは出来そうだが戦闘が出来るまで回復はしていない様だった。


 (このまま連れて行って巻き込むリスクの方が高すぎるか……)


「ティリア、一旦二人を連れて街まで戻ってくれるか?」


「分かりました。道中のモンスターも少なそうだったから戻れると思います」


「お兄ちゃん一人で行く気?」


「暁人さんもいるし大丈夫だよ! 必ずケリをつけて戻ってくるから。それに他のエリアもきっと大変な事になってると思うから早く行かないとな」


「分かった……けど無理はしないでね」

「蓮、必ず戻ってきて。信じて待ってるから」


「必ず戻ってくるよ! だからホームで待っててくれ」

 

 蓮は葵達を送り出してからやり残していた事を済ませる事にした。


「暁人さん、すいません。他のエリアに行く前に済ませたいことがあるんですが……」


 モンスターのトレース、それとシュトルをどうするかなんだが。


 ひとまずシャドウゴーレムへトレースを実行して影移動を取得した。また硬質化だったらどうしようかと思っていたがこれは当たりだ。

 影移動は影が必要と条件こそあるが使用後硬直などのデメリットが無い。唯一、目視していないと使えないのはデメリットか……。


 そしてシュトルもまだ気絶していたのでトレースを実行すると修復というスキルを取得できた。

 多分ゴーレムを復活させてたスキルだがこちらは後で試す事にした。


「よし、これでトレースしたスキルも5つか。ストック8って書いてあるけど上限までいったらどうなるんだ?」


 (また検証しないとな。強制的に上書きされて瞬身が消されるのは勘弁だ)


「あとは……シュトルなんだけど、こいつはあとで他のホルダーの人に街まで連れ帰ってもらおう。暫く起きなそうだしな」


 蓮達はトレースなどを済ませると早々に他のエリアの様子を見に行った。


 13階層に続く扉に一番近いレストエリアに恐らくフィアーズギルドのマスターがいると思った蓮達は暁人の記憶を頼りに最短距離で向かった。



 レストエリアに着くとそこは地獄絵図の様な光景が広がっていた。

 部屋全体あらゆるところから炎が上がっており、部屋の中も尋常じゃないほど熱い。


「何だよこれ……。優里さん! いますか!?」


 声をかけながら部屋の奥の方へと進んでいくと二人の人物が戦っていた。


 一人は優里さん、もう一人は恐らくフィアーズのマスターだろう。


「優里さん!」

「マスター!」


「暁人!それに君は暁人と同じエリアに配置されていた人だね!」


「ギルド7thの蓮です! 加勢しに来ました!」


『おい。くっちゃべってんじゃねぇ! おらぁ!』


「くっ、シールド!」


 (凄い……あのシールド全ての攻撃を防いでる)


 優里のスキルは《守護》。条件はあるもののありとあらゆる攻撃を軽減する能力を持っている。しかし、攻め手に掛けるようで押されている状況のようだ。


「暁人、それに蓮さん! こいつはフィアーズのマスターでほむらっていう名前だ。スキルは《炎神》。あいつが出す炎には触れちゃダメだ」


「分かりました! 俺が攻撃するので優里さんと暁人さんは援護お願いします」


 蓮は改変効果を掛け直すと焔へ向かって攻撃を仕掛けた。


「相手は防御姿勢がとれていない! いける!」


「――ダメだ! 無闇に突っ込んだら……!」


『ふっ、大層なスピードだがその攻撃は届かないぜ?――炎陣!』


 焔がスキルを使うと本人の周りを囲う様に蒼い炎が燃え上がった。


 蓮は先程の優里の触れてはいけないという言葉を思い出してすぐさま攻撃を止めた。


『よくその速度で攻撃を止めれたな! 触れてたらお前もうその場に居なかったかもな』


 焔の出した炎陣は自身の周りを炎で囲う事によって攻撃を防ぐものだった。焔が出す炎は特殊で一度体に触れると普通は消すことは出来ない。


 触れていたら蓮も今頃は消し炭になっていたところだ。


「相手に触れることが出来ないって……それじゃどうやって倒せば……」


 三人は倒す算段が付かないまま相手の攻撃をひたすら避けていた。


 (暁人さんの液状化で……いや、多分意味ないだろう。液状化したところで突っ込む際に火が移ってしまうし)


『お前らから攻撃してこないんだったら俺からいくぜ!――炎舞!』


 焔の持つ剣に炎が移り剣を振るたびに炎を纏った斬撃が蓮達を襲う。


 暁人の目の前に複数の斬撃が迫ってきた。


 (避けれないっ!)


「シールド!」


 間一髪で優里の出したスキルで斬撃を防いだがシールドは粉々に砕けてしまった。


「二人とも気を付けてください! 一度シールドが壊れると暫くは出せません!」


 (どうにかしないと……なんか無いのかよ!)


 蓮は相手の攻撃を避けながらスキル画面を開いた。

 そこにはここにくる前に使い切ったポイントの欄に100と表示されていた。

 恐らくはシャドウゴーレム討伐で何かしらの条件を満たしたのだろう。


 魔改造のスキルを唱え、素早く内容を確認していく。


 いくつかある中で一つ気になった内容があり、それを選択した。消費ポイントは100。



流転るてん

 直前で自身に起きた事象を選択した対象1体に移す。ただし物理的な攻撃には適用不可



 (これなら上手くいけば……!)


 蓮は相手の攻撃を紙一重のところで避けながら焔の背後を取った。


「こっちだぁぁぁぁ!!」


『何度やっても同じだ。炎陣!』


「蓮さん!危ない!」


 蓮は炎に構わず攻撃をした為、蓮の身体は炎に包まれた。


「――流転」


 蓮の身体を纏っていた炎は焔に移った。


『がぁぁぁっ! くっそ! 何だってんだ!』


(やったか!?)



『クククッ……って苦しむとでも思ったのか?俺が出した炎なんだぞ?くらうわけないだろ!』


 焔を纏っている炎は瞬く間に消えて焦げてすらいない。ダメージも一切入ってなさそうだ。


(これもダメなのか……あいつに炎陣を出させないような隙さえ作れれば……)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る