第24話「異質な力」

第24話「異質な力」

 蓮は自らのステータス画面を見て驚きを隠せなかった。というよりは何だこれという理解が追いつかない状況だった。


 やはり何度見ても最低ステータスなのは間違いない。現にそれぞれの能力の横には1が並んでいる。


 だが能力の記載されている一覧の右上に【SBP:0】という見た事もない表記があった。やはりなんだこれ状態である。


「とりあえずスキルも見てみるか。魔……改造?」


 蓮のスキル欄には魔改造という文字のスキルが追加されていた。


《魔改造》

スキルボードポイント(SBP)を使い能力を解放する事が出来る


「よく分かんないけどSBPってのを使って新しい能力が取得できるって事だよな? でもそのポイントが0なんですけど……」


 蓮はスキルの意味が分からなかったのでひとまず色々試すことにした。


 今日は休息日としていたので他の三人は既にホームを出ていた。街に買い物行こうよと昨日話してたので恐らく女性三人で出掛けたのだろう。


 蓮はいくつか検証した。


 まずスキルを唱えてみたがSBPが0の為、発動実行出来ませんと表示されてしまった。


「ふーむ、とりあえずこのSBPってのを貯めなきゃいけないんだな。けど、どーやって貯めるんだ?」


 一番可能性高いのはレベルアップによる取得だと思い11階層でオークを倒しに出掛けた。オーク単体であればリスクも低いので問題無い。


 8体ほど倒したところでレベルが上がった。


「どれどれ……0か。あと考えられるのは……」


 蓮はそれからオークをあと2体倒した。そしてステータス画面を確認すると【SBP:10】と表示されていた。


「ビンゴーっ! やっばり特定のモンスターの討伐数だったか!」


 この手の仕組みはゲームで何回も経験してきたので答えに辿り着くまでは早かった。


「では、改めて。魔改造!」


 《魔改造起動》


 目の前には1枚の円盤が現れた。円盤には丸や四角、三角といったマークが描かれており、中心から外側に広がるように並んでいる。


 (これは……スキル盤みたいなもんか?某ゲームであったような……)


「とりあえず今の10ポイントで解放できるのは……ステータス倍化か」


 蓮はボードのステータス倍化と書かれたマスを触るとピロリンと軽快な音と共にスキル取得の文字が出てきた。


「よしっ! って待てよ。これって……」


 ステータスウィンドウを開くと能力は2になっていた。

 ですよねー。と言わんばかりの表情で落胆した。蓮の予想通り、というか当たり前に1を倍にしても2にしかならない。いわゆる雀の涙程の上昇だ。レベルで表すなら0.5レベル分の上昇。


「意味ねーじゃねーか!!」


 ポイントが尽きてしまい、他の項目は見れなかったのでまたポイントを貯めることにした。


――2時間後


「ふぅ、こんなもんか!」


 蓮はあれからひたすらオークとゴブリンとコボルトの3種類のモンスターをひたすら狩り続けた。レベルも2上がっていた。


「どれポイントは……。160! 結構溜まったな。けど、この3種類のモンスターからはもうポイントは得られそうにないな」


 蓮は3種類とも30体を超える数を討伐したがそこから先はポイントが付与されなかったので1種類につき30体を目安にポイント獲得は打ち止めだと思った。

 実際はここから必要数がかなり増える為上がらなかっただけなのだが。


「さて……と! お楽しみのスキル獲得タイムいきますか!」


 スキルボードを開くと最初は黒い靄で確認出来なかった項目がいくつか増えていた。どうやら解放したマスから1マス分が見える仕組みの様だ。


 今のところ増えたのは4つ。


 ・状態異常耐性(小)

 ・状態異常効果増加(小)

 ・隠蔽

 ・ステータス倍化


「げ、またステータス倍化……。上二つは内容も見た通りだと思うけど、隠蔽だけよく分からないな。とりあえず今あるポイントで全て開放できるみたいだから開放しておこう」


 先程と同様の軽快な音と共にスキル取得のウィンドウが表示された。


 隠蔽は10秒間自身の姿と気配を消すスキルで戦闘においてはかなり有効なスキルだった。


 蓮はスキルをある程度開放するとさすがに疲労もありギルドホームへ戻ることにした。

 

 なんだかんだで合計100体以上のモンスターを相手にしたのだから疲労も当然だ。蓮はホームへ着くなり倒れ込む様に眠りについた。


◇◇◇


――3日後


 約束の日となった為、蓮達はエルムがいる鍛冶屋へ向かう事にした。


「いらっ……! あ、蓮さん! それに皆さまも! お待ちしておりました!装備の作成は先程終わったところです」


「エルムさんありがとうございます! それにしても3日で作れてしまうとはさすがですね!」


 エルムはそれほどでもーと笑顔で言っていたが目の下には隈があり、きっと寝る間も惜しんで作成してくれたに違いない。


「さあどうぞ! こちらが四人分の装備一式です!」


「おおおおっ!!」


 四人は声を揃えて同じ反応をした。

 目の前に並ぶ装備はこれまで見てきたどの装備よりも神々しく見えた。


 エルムが作ってくれた装備の等級はユニーク、装備効果は一切無い。

 というのもこの装備は全て成長型装備と言って装備する人の戦闘経験に応じて能力が付与されていく装備だそうだ。


「これらはエルダー装備と言います。みなさん同じ効果を持つ成長型装備ですが見た目が一緒になるのもあれなのでそれぞれ加工しておきました」


 蓮は元々の装備の赤黒い色を基調とした軽装備、葵と百合は白をベースに赤色で刺し色が施されていた。

 ティリアは薄い緑のローブに包まれており、ティリアの装備だけは他の三人と雰囲気が異なっていた。


「ティリアのも俺と同じ装備の種類なのか?」


「はい! 加工で見た目もかなり変えてありますがエルダー装備ですよ!』


 蓮はほえー。という顔をしてローブを触り興味津々だった。


 DEFは+65、SDEFも+65となっており上位ホルダーの装備の倍くらいはある性能をしていた。


 (ここから更に成長するってヤバくないか?)


 蓮達は装備に満足してエルムさんにお礼をすると街に出て、四人で11層へと装備の感触を試しに行った。



「とりあえず入り口付近で試してみるか」


「そうだね! 感触だけ確認したら今日は戻ろ!」


 蓮はATK +とAGI +を改変効果で付与してオークに切り掛かろうとしたが自身の異変に気付いた。


「たぁぁっ!……って、え!?」


 オークは一瞬で消滅した。というより蓮が一瞬でオークの懐に飛び込み振り上げる前の剣に刺さって死んだのだ。


「お兄ちゃん? わざわざ瞬身まで使ったの?」


「いや、使ってないしそもそも攻撃する前に倒してしまったんだけど、いや、凄い伝えづらいんだけどさ」


 蓮は頭の中で一つの答えに辿り着きすぐにステータス画面を開いた。


ATK 404

AGI 404


「やっぱり……」


 ステータスがとんでもない数値になっていた。理由は明確で、スキルボードで取得した『ステータス倍化』の効果だ。


 あの効果は能力値補正後のステータスにも効果が現れるのだった。


 (400超えってレベル200相当じゃないか……それにまだ白剣にしか改変使ってなくてこれかよ。さすがに上限とか制約がありそうだな……)


 それから蓮はスキル魔改造についての事を全て話した。

 説明を三人は聞いて、半ば信じられないという表情でずっと俺を見ていた。


「ひとまず分かったよ。けど多分これって周りに言わない方がいいよね」


「そうだな。面倒な事に巻き込まれそうだから俺達だけで留めておこう」


 この後も1時間ほど四人はモンスターを倒してそれぞれの装備に慣らしていった。


 ティリアの新しく習得したスキルのシンクロも敵を眠らせてそれを味方に移す事も出来るみたいだったが今のところ何かの役には立ちそうもなく残念がっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る